胚移植後の夫婦生活について

胚移植後の夫婦生活で着床率が高くなる可能性はありますか?

相談者 : くりさん(38歳)4 回移植を行い、1 〜2 回目はホルモン補充周期で陰性、3回目は自然周期で化学流産、4 回目は自然周期で稽留流産。5 回目の移植を予定しています。妊活情報の動画で、胚移植後に夫婦生活をもつと着床率が高くなるという意見がありました。今は刺激が子宮収縮を引き起こし、着床しにくくなると思い、胚移植後の夫婦生活を避けています。夫婦生活が着床に良い影響が期待できるなら、積極的に取り組みたいと思っています。また、移植へのアドバイスもお願いします。
久保みずきレディースクリニック 石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。
胚移植後の夫婦生活について、着床に良い影響、悪い影響はありますか?
石原先生●良い影響としては、男性の精液成分が着床にプラスの効果があるという報告もありますが、まだ明らかになっていません。ご夫婦のコミュニケーションは大切ですので、胚移植後に夫婦生活をするのはいいと思います。
 悪い影響としては、女性も男性も生殖器に炎症や感染症など、何らかの異常がある時は注意が必要です。たとえば、女性が外陰部にかゆみや痛みを感じる場合、おりものがいつもと違う場合、男性が生殖器に異常を感じる場合など性交渉によって着床を妨げる細菌や炎症物質が子宮の中に入り込んでしまう可能性があります。夫婦生活は控えたほうがいいでしょう。
不妊原因は不明だそうです。どのような検査や治療法を提案されますか?
石原先生●着床の妨げになっている子宮側の要因を転院先でもう一度調べてみてはどうでしょうか。子宮の形態異常、免疫異常、ホルモン異常を調べる基本検査のほか、子宮内膜の炎症を調べる子宮鏡検査や、子宮内フローラ検査(先進医療)を受けるといいと思います。その結果によって、治療を受け妊娠できるかもしれません。
次の移植に向けたアドバイスを!
石原先生●移植胚がまだ残っているとのこと。子宮側に問題がなく、これまで1個胚移植しかされていないのであれば、妊娠率を高める目的で2個胚移植もいいと思います。
 それでも妊娠に至らないようであれば、受精卵側の要因を調べるPGT ‒A(着床前胚染色体異数性検査)を検討されてもいいでしょう。くりさんは4回移植して結果が出ていないので、お二人にその意志があれば、PGT ‒Aに進んでもいいタイミングだと思います。
ホルモン補充周期と自然周期では、どちらがいいと思われますか?
石原先生●基本的に自然周期を推奨していますが、排卵がない場合はホルモン補充周期も選択肢の一つになります。 ただ、ホルモン補充周期は胚移植時期を調整できるメリットがある一方で、妊娠合併症のリスクを増加させることがわかっています。
 ホルモン補充周期では、微弱陣痛でお産が長引いたり、その結果、帝王切開が増えたり、癒着胎盤による大量出血で命にかかわる厳しいケースが増えたりしています。妊娠後の安全なお産のためにも、排卵がある人はできるだけ自然周期を選んでほしいと思います。
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