妊活中の方で「性行為の途中で断念することが多い」「夫婦でタイミングがあわない」といった悩みを抱えている人もいるでしょう。そういった方々をサポートしてくれるのがシリンジ法です。どんな方法かなどを三軒茶屋ARTレディースクリニックの坂口健一郎先生に聞いてみました。
1999年 防衛医科大学卒。大学病院をはじめ、不妊治療を専門とする木場公園クリニック、リプロダクションクリニック東京などの勤務を経て、2019年「三軒茶屋ARTレディースクリニック」を開院。患者さんとの対話を第一に、スピード感をもった治療方法を提案。また、体外受精(ART)に精通したスタッフがそろい、妊娠に向けてのサポート体制も十分。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
厚生労働省のデータによりますと、男性不妊の原因として性機能障害が大幅に増えているようです。具体的にどんな障害がみられるのでしょうか。
実際、男性不妊は最近増えつつあります。精子の運動率低下もその1つです。今は性欲が少ない男性が多く、自ずとセックスする回数も以前より少なめ。それにともなって射精回数も以前と比べて減っています。そうなると新たに精子をつくる機会も少なくなるため、造精機能が弱まり、運動率が悪い、濃度が低い精子が多くなります。また、マスターベーションではOKなのに、膣内だと射精できないという性機能障害も見受けられます。
男性の性欲が少なくなった原因としてどんなことが考えられますか。
男性の性欲が低下する原因として考えられるのは、まず日々のストレスです。妊活をされているご夫婦の中にはセックスに対して夫婦のスキンシップを深めるものではなく、子どもを授かるための手段と考えている人もいるでしょう。そうなるとセックスをすること自体がプレッシャーになり、ストレスになってしまうことも。また、AGA(男性型脱毛症)治療薬の副作用として勃起不全や精力減退が見られる場合もあります。このような悩みでタイミングが思うように取れない場合に、妊活のサポートとなるのがシリンジ法です。
シリンジ法とはどのような方法ですか?
マスターベーションなどで紙カップや容器に精液を採取。それをご自身やパートナーが針の無い注射器で吸い上げ、女性の膣に注入させる方法。自宅で行えます。また、病院に定期的に通院して卵胞チェックをしてもらい、シリンジ法にトライした方がいいタイミングを指導してもらう方法もあります。
どのよう方に向いていますか。
膣内射精ができない場合など、妊活したいのにうまく夫婦でタイミングを合わせられない方々に向いている方法です。
人工授精との違いを教えてください
人工授精は洗浄や濃縮などをして調整した精液を、やわらかく細いチューブを使って直接子宮内に注入します。一方、シリンジ法は採取した精液をそのまま膣に注入します。シリンジ法は、タイミング法と同等と考えるといいと思います。
シリンジ法のメリット、デメリットを教えてください。
メリットは、うまく夫婦でタイミングが取れない、成功自体が夫婦にとってストレスになっている場合、活用することで性交回数を増やせる点です。デメリットは、使い方を間違えてしまうと感染症のリスクがあります。使う際はキットの添付文書をよく読んで使うようにしてください。また精子は採取して2時間以内のものを注入するのがいいでしょう。
シリンジ法に対する先生のお考えをお聞かせください。
シリンジ法は、あくまでもタイミングが取れないときなどのサポート的なものです。成果が出ないのに、ずっとやり続けても妊活できる時間を無駄にしてしまいます。シリンジ法にトライする場合は、予め回数を決めておくことが大切です。一般的な目安としては、3回(3周期)やって妊娠しない場合は、不妊を診られるクリニックを受診し、ステップアップなどの相談をしてみてください。
これから妊活を始める人、すでに取り組んでいる方へのメッセージをお願いします
妊活中、うまくいかないことが続くとどうしてもご夫婦だけで悩んでしまうこともあると思います。そういった場合は、病院を活用してみてください。オンライン診療などでも構いません。専門家に相談することで少しでもストレスを減らすことができます。
これから病院に通院しながら妊活しようと考えている方は、予め通院したい病院のサイトや動画などを見ておくといいでしょう。初診の際、医師の話をスムーズに理解することができ、より効果的な治療を受けられると思います。