ちぃいきゃんさん(37歳)
北くまもと井上産婦人科医院副院長兼リプロダクション部門責任者の井上治先生にお話を伺いました。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
・1年間でAMH値が下がった理由としては、どのようなことが考えられますか?
誤差の範囲内ではないでしょうか?
測定試薬にもよりますが、AMH測定には15%ほど誤差があると報告されています。
1年の間に卵巣の手術をしたり、ピルを服用後に測定した場合はAMHが低下すると考えられます。そうではないのであれば、1年でAMHが1.35から0.94と低下しても誤差の範囲内もしくは1年たったためと考えるのが一般的かと思います。
・甲状腺ホルモンと不妊の関連について教えてください。
“甲状腺ホルモン数値基準値より高く“とありますが、どのような状態なのでしょうか?
チラージンを服用しているということはTSHが高値であったのかと思います。
TSH(甲状腺刺激ホルモン)が2.5mIU/L未満であったのか、2.5μU/ml以上の正常範囲もしくは、正常範囲を超えて高値であったのかわかりません。
体外受精における採卵数や成熟卵数に関しては甲状腺ホルモンを補充してもかわらないという報告が多くあります。TSHが2.5μU/ml以上の正常範囲内であれば、チラージンを服用していますので、そこまで気にしなくてもよいでしょう。当院ではTSHを2.5μU/ml未満にコントロールし採卵胚移植を行っています。
甲状腺機能と卵胞発育に関しては、甲状腺機能異常があれば、卵胞発育に影響したり排卵障害を引き起こす可能性もあります。ただ、妊娠してからの方がより重要で、コントロール不良であれば、流・早産率の上昇や妊娠高血圧症、心不全の発症を増加させます。
米国甲状腺学会ガイドライン2011では、妊娠前~妊娠初期はTSH 2.5μU/ml未満に抑えたほうが良いと報告されています。ただ、食生活がアメリカとは異なりますのでこれがそのまま日本人に当てはまるかどうかはわかりません。日本のガイドラインがありませんので、2.5μU/ml未満に抑えている病院が多いと思います。
・37歳で保険適用での治療を行う場合の妊娠率はどのくらいだと考えられますか?
2021年の日本産婦人科学会の報告によると37歳の妊娠率は39.2%です。凍結胚盤胞移植では、40%を超えています。
・先生なら相談者さんのようなケースではどのような治療や検査を提案されますか?
採卵することは注射や卵巣を穿刺しないといけないため、不安があるのは当たり前ですが、なにが一番不安なのかお聞きしたいです。体外受精前に妊娠できるかはわかりません。
妊娠率からすると可能だとは予想できますが、体外受精前では移植可能な胚ができるかもわかりません。漠然とした不安なのでしょうか?医師はもちろんですが、カウンセラーや看護師さん等クリニックのスタッフにお話を聞いてもらった方がよいと思います。
治療としては、主治医の先生同様まず1回採卵・胚移植をやってみます。
胚の発育が悪いのか、胚はよくても妊娠できないのかなど、何か妊娠できない原因をさがします。
サプリメントを服用していただき、体の状態をよくするのも一つでしょう。
検査としては、保険なので、甲状腺を再検査するくらいでしょうか。
・その他、アドバイスをお願いします。
37歳であれば、ある程度妊娠率は確保できていますので、保険適応の胚移植6回まででほとんどの方は妊娠すると予想できます。まずは主治医の先生・クリニックのスタッフにお話を聞いてみてはどうでしょうか?