プレコンセプションケアで目指す、より良い妊娠【医師監修】

将来、結婚や妊娠を目指す女性やカップルのヘルスケアとして、近年注目を集めているプレコンセプショケア(Preconception care)。妊活に向けての第一歩として取り組みたいプレコンセプションケアとは一体どのようなものなのか、つつじが丘ウイメンズクリニックの若原靖典先生にお話を伺いました。

つつじが丘ウイメンズクリニック 副院長 若原靖典 先生
名古屋大学医学部卒業。豊橋市民病院産婦人科勤務。同院にて産婦人科第二部長(生殖医療)を務めたのち、平成23年からつつじが丘ウイメンズクリニックに勤務。医学博士。産婦人科専門医(日本産科婦人科学会、日本専門医機構)。生殖医療専門医(日本生殖医学会)。女性ヘルスケア専門医(日本女性医学会)。

妊娠可能な全ての女性とカップルに必要なもの

“コンセプション”は「受胎」という意味で、プレコンセプションケアとは簡単に言うと、妊娠する前から健康に配慮しましょう、ということです。2012年に世界保健機関(WHO)が「妊娠前の女性とカップルに医学的、行動学的、社会的な保健介入を行うこと」と定義し、日本でも2018年に成立した「生育基本法」という法律に則って、生育医療の切れ目ない支援体制を構築すべく、その一環としてプレコンセプションケアは国の政策として推進されています。

プレコンセプションケアは、教育や知識、メディカルチェック、そして自分自身で身体をケアする、という3つの柱から成ると思います。妊娠を計画している女性だけでなく、全ての妊娠可能な年齢の女性にとって必要なもので、一生に渡る自身の健康に対しての知識を持つことは、より幸せに生きるための手段となり得るのではないかと思います。

まずは妊娠に対する知識を深めることが最重要

少し前まで年齢への意識というのは恐らくほとんど無かったと思います。ひとつの目安として、35歳を過ぎると妊娠はしにくくなります。また、生理痛が強い人には、子宮内膜症という病気がある場合があります。子宮内膜症は妊娠の妨げになります。子宮内膜症があると 30~50%の人が不妊になるといわれています。

ピルなどで治療すれば、生理痛も軽くなりますし、子宮内膜症の悪化防止にもなります。いつ妊娠を目指すのか、妊活をするかどうかは人それぞれですが、こうした知識の有無やそれまでの準備の仕方によって、同じ年齢の人でも妊活のスタートラインが全く違ってきます。

また、男性不妊の原因として最近増えてきているのは性機能障害です。以前は3.3%と報告されていましたが、最近の報告では13.5%と非常に増えています。性交渉の正確な知識がなく誤ったイメージがあると不安や緊張を生み、いざ女性を前にすると勃起障害になってしまうと言われています。男性もやはり正しい知識を得ることが大事ですね。

かかりつけの婦人科を持ち、専門家に相談を

次にメディカルチェックですが、貧血など一般的な検診で行われる検査に加えて、必須なのがAMHと性感染症の検査です。AMHは数値を知ることで、ご自身の閉経年齢(いつまで妊娠可能か)を予測できます。性感染症は、不妊の原因になり得るクラミジア、妊娠した時に赤ちゃんに感染するHIVや最近非常に流行している梅毒も要注意。妊娠前に治療しておくことが重要です。

加えて、風疹の抗体検査も行ってください。妊娠中に風疹にかかると赤ちゃんが先天性風疹症候群(心疾患、難聴、白内障などの障がい)を発症する危険性があります。20代〜30代に増えている子宮頸がんの検査もぜひ。

あとは適正体重をキープしたり、喫煙している人は禁煙するなど、ご自身で気をつけられることもあります。アルコールもほどほどに。妊娠したら、絶対にダメです。

「国立生育医療研究センター」のHPに記載されているプレコン・チェックシートで確認してみましょう。男性用もチェックシートもあります。そして、これが一番大切なことですが、是非、信頼できるかかりつけの婦人科をもってください。専門家から正しい知識を得たり、気になることがあれば相談をしてみましょう。

 

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