良好胚を5回移植しても流産か陰性ばかりで、「いつまで続ければいいのか…」と心が折れそうに。これからできることや、心のもち方について、秀子先生にお話を聞きました。
採卵、移植を繰り返せば「いつか妊娠できる」と信じましょう
1度の採卵で9個の胚盤胞ができているので、お利口さんな卵巣だと思います。ただ、卵子の質は排卵誘発によっても左右されるから、採れた卵子はどれも同じ〝味付け〟がされているということ。つまり同じカテゴリーの胚盤胞なんですね。だから、もう一回、仕切り直しをすると考えて、採卵してもいいのではないでしょうか。
担当の先生がおっしゃるように「いつか妊娠できる」と信じましょう。着床して流産しているわけですから。流産を良しとするかは別として、それが不育症だとしても、何回か流産しているうちに8割の人が妊娠・出産までいくといわれています。いまの不妊治療の世界では、37歳はまだまだ若手ですから、良い卵子は採れるはずです。PGT-A が近くでできないのであれば、採卵と移植を積極的に繰り返してもいいと思います。
残りの胚盤胞をすべて融解しきれいな胚盤胞を移植する方法も
保険診療では貯卵ができないので、残り3個の胚盤胞を使い切らなければいけません。だからといって、胚盤胞9個すべてがきれいな胚盤胞であることは、なかなか難しいと思います。当院でもよくあることですが、きれいな胚盤胞は9個のうち6個ぐらいまで。どうしても残りは補欠のクオリティになりがちです。だから3個まとめて融解して、きれいな胚盤胞だけを移植する。3個ともきれいであれば1個移植して、残りを再凍結すれば、次に移植できます。
一方、そうでなければ、「胚盤胞があるから移植する」というのではなく、思い切って移植をキャンセルすることも大事です。融解してもきれいな胚盤胞に戻らない胚は、移植しても生き延びることが難しいからです。まずは担当の先生に「3個まとめて融解できますか?」と聞いてみてもいいですね。
リセットの意思表示をすることで医師の治療の選択肢が広がる
着床はできているので、出口は見えています。でも、移植がダメだった時の落ち込みにだんだん耐えられなくなり、つらい思いをされているのでしょう。まして自分の力でどうにかなるものでもありません。たとえば、スポーツ選手でもトレーニングしていれば、必ず優勝できるわけではありませんよね。それでも毎日トレーニングを続けているわけです。先が見えない状態の中で努力しているのは、不妊治療を受けている人に限らずみんな同じこと。だから良い意味で開き直って、ダメだった時に気持ちを切り替えられることが大切だと思います。
そのために一番楽なのは、期待せずにいることです。移植が終わったらビールでも飲んで、次の治療の計画でも立ててみましょう。それでダメでも「しょうがないなー」と心の振り幅を小さくしておくと、ダメージは少なくてすみます。実はそれぐらいの心持ちのほうが妊娠しやすいんです。
そういう気持ちで過ごしていくなかで、担当の先生とリセットのお話をされるといいでしょう。採卵は侵襲的なものですから、「リセットを提案しても許諾してもらえるだろうか?」と、医師から積極的に言えないこともあります。「できたらもう一回採卵してみたいんです」と、患者さんからの意思表示があると、担当の先生も治療の選択肢が広がると思います。
秀子の格言
「もう一回、仕切り直しと考えて採卵と移植を繰り返しては。移植後は努めて心を無にしましょう」