不妊治療約2年で一度も着床しない

体外受精を3回経て一度も着床しません。
今後の検査・治療は?

相談者 : ももさん(29歳)体外受精3 回目にチャレンジしましたが、成功に至りませんでした。今回は胚盤胞2個移植で期待していたのですが、着床すらしませんでした。着床不全の検査では、慢性子宮内膜炎が陽性でしたが、薬で治療しています。血液検査はTh1/Th2 が16 と異常値のようです。これだけ着床しないのには、どんな原因が考えられますか?また今後どのような検査を受けたらよいでしょうか?
蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。

ももさんの不妊の原因は、現時点では「不明」とのことですが、どんなことが考えられますか?やっておいたほうがいい検査などはありますか?

蔵本先生● 着床しない原因としては、①胚の質 ②子宮内膜環境 ③その他になるでしょう。最も多いのは、胚質の不良ですが、ももさんは、胚盤胞の質についてはどうだったのでしょうか?

卵子や胚の染色体の数的異常はよくありますが、29歳でしたらあまり心配はいらないかもしれません。また、検査で慢性子宮内膜炎が陽性だったとのことですが、子宮内膜細菌叢検査(EMMA/ALICE)はされているでしょうか?

善玉菌であるラクトバチルスが90%未満だと、腸内細菌などが再び入りやすい状態ですので、服薬後に完治しているかどうかを確かめるためにも、検査をおすすめします。

反復着床不全の方は、子宮内膜の状態が胚盤胞移植する時期とズレている可能性もありますから、ERA(子宮内膜着床能検査)で着床の窓を調べてみられるのもいいと思います。もし胚移植時期にズレがあったら、そこに合わせて胚盤胞を移植します。

ももさんは現在、体外受精を保険適用内で3回されているとのこと。残りあと3回ですから、その前に検査をして次に臨まれるのがよいでしょう。このEMMA / ALICE とERAは同時に行うことができ、併せてEndomeTRIO といいます。先進医療で保険と併用ができる自費診療ですので、同時に行った場合、施設によっては少し費用を抑えられるかもしれません。

Th1/Th2の数値についてはどうでしょう?

蔵本先生●Th1/Th2が16と基準値より少し高いので、細胞性免疫が高いと思われます。不妊治療が保険適用になる以前でしたら、免疫抑制剤のタクロリムスを1錠処方していましたが、現在は保険適用外なので処方できません。

先生なら今後どのような治療を行いますか?アドバイスがありましたらお願いします。

蔵本先生●次回以降については、卵巣刺激法を変えてみることが一つ、それから培養液も検討したほうがいいでしょう。培養法はタイムラプスを用いた、より安定した培養環境をおすすめします。ももさんはまだ20代で卵質もいいはずですから、妊娠できる可能性は十分あると思います。状況が変わらない場合は、転院も視野に入れてみられてもいいかと思います。

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