妊娠率に影響する?!
人工授精時の精子調整後の運動率
あかさんは、調整後の精子の運動率を気にされています。
大島先生● 調整後の運動率についてはそんなに気にする必要はありません。そもそも人工授精(AIH)は、採取した精子を、細いチューブを使って子宮へ送り込む方法です。子宮に送り込む前に精子の動きを妨げる白血球や未熟や奇形の精子、細菌などを取り除くなどの調整をしますが、研究の結果、妊娠率と運動率は関係がないと報告されています。。また、当院で正常に動く精子の量と妊娠率の関係を研究したところ、人工授精時の精子数と妊娠率に関連がないことがわかりました。つまり精子の運動率が良くない、量が少ないからといって妊娠率が必ず低くなるわけではないのです。
ちなみに、精子の調整法もいろいろあり、クリニックによって異なります。当院では、密度勾配遠心法を行っています。洗浄によって精液が清潔になり、精子の動きを妨げる白血球や未熟な精子、死んでいる精子を取り除くことができ、高い妊娠率が見込めます。では人工授精で妊娠率を上げるためにはどうしたらいいでしょうか。
大島先生●人工授精は、確実に精子を子宮の奥に送り込むところが違うだけで、あとはタイミング法と変わりありません。人工授精でも、卵子が妊娠のポイントです。
今、あかさんがもし飲み薬のみで排卵誘発をしているならば、それにプラスして注射をしてみるのもいいでしょう。排卵数が多い方が妊娠率は上昇します。当院の成績でも、妊娠している症例の平均排卵数は2・29個、妊娠していない症例では平均1・96個で、両者には有意な差があります。
また、人工授精を行う時期が重要なポイントで、排卵後の方が、妊娠しやすいという当院の研究結果です。まずはこれら2つに留意することで、妊娠率を上げることができるでしょう。
もし精子に問題があった場合、セルフケアで改善できるはありますか。
大島先生●密着型の下着は精巣を圧迫する可能性があるので避けましょう。それ以外にも精子に良くないといわれているものは複数ありますが、真偽のほどははっきりしません。
正常で元気な精子を育むことも大切ですが、人工授精のタイミングと誘発法を見直すほうが、妊娠に早く近づける可能性があります。治療で迷ったり疑問に思ったら、主治医に相談をしながら進めてみてくださいね。