妊娠中の頭痛と便秘について

日頃、頭痛や便秘に悩まされている女性は多く、妊娠するとひどくなって、いつもの薬を飲んでもいいのか、判断に迷うことがあると思います。本稿では特徴や原因、治療について、お話しします。

青葉レディースクリニック 小松 一 先生 高知県出身。1995 年九州大学医学部卒業。九州大学病院周産母子センターや北九州市立医療センター、九州厚生年金病院などで研鑽を重ね、2007 年に「青葉レディースクリニック」を開業。高齢出産を多く手がけており、安心できる分娩をモットーにしている。

片頭痛と筋緊張型頭痛

女性に多いといわれる片頭痛は頭の片側が痛むことに由来しますが、実際には4割が両側性に発生します。妊娠初期から20週ごろまでの妊娠悪阻の時期に頻発することから、体重減少に拍車がかかることがあります。

片頭痛の治療は頭痛発作が起こった時に服用するスマトリプタンが即効性があって、妊娠中も安全で有用と報告されていますが、一般的にはアセトアミノフェン( カロナールR)や漢方( 呉茱萸湯)が用いられます。 一方、緊張型頭痛はもともと肩こりがひどい方に多くみられ、後頭部から首にかけて圧迫されるような非拍動性の頭痛で、多くは両側性です。

原因は歯や顎あごの噛み合わせの異常、ストレス、不安、うつ、長時間の緊張した姿勢、鎮痛剤の乱用があげられます。治療は前述のカロナールRや漢方(葛根湯)が用いられます。筋弛緩作用を有する抗不安薬(エチゾラム、ジアゼパムなど)が有効ですが、妊娠中の服用は控えてください。

片頭痛も筋緊張型頭痛も頭が割れるように痛くて、めまいや悪心・嘔吐がひどく、高血圧を伴っていたり、長時間続く場合は頭部MRI など精密な画像診断が必要なため、脳神経外科医を受診しましょう。

器質性便秘と機能性便秘

一般的に、3日間以上、排便しない場合を便秘症と定義していますが、単に日数だけではなく、腹痛や腹部膨満感、排便困難な状態を伴います。大きくは器質性便秘と機能性便秘に分けられます(表参照)。

卵巣や胎盤で産生される黄体ホルモンは、消化管の蠕動運動を低下させる作用があり、妊娠すると、この黄体ホルモンが増加するため、弛緩性便秘がひどくなります。また妊娠後期になって、大きくなった子宮は腸管の運動を圧迫し、器質性便秘を起こします。

予防と治療には生活習慣の改善が重要です。朝起きたら、お水を飲んで、朝食を必ずとり、条件反射的に便意をもよおすこと。そのためには早起きして時間の余裕をもつことも大事ですね。とにかく仕事中でも便意を感じたら、我慢しないでください。

食品表を参考にして20g /日以上の食物繊維を十分に摂ること。十分な水分も必要です。もう一つは歩くこと。ストレッチも組み入れてください。歩行運動は安産にもつながります。

それでも改善しない場合は便を柔らかくし、膨張させて、排便をうながす酸化マグネシウムなどの緩下剤や腸管の蠕動運動をうながすラキソベロンRなどの刺激下剤を用います。

いずれも1週間に1回程度の便秘があれば、治療についてかかりつけ医に相談しましょう。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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