移植前や移植後のホルモン値について基準値はありますか?
胚移植がうまくいかない理由として、ホルモン値が低いことが関係あるのでしょうか。
福井先生● 治療内容を拝見すると、とてもスタンダードな治療方法だと思います。移植後11日目のhCG 値0·0019mlU/ ml というのは確かに低いですね。マイナスに近いというか、ほどんど出ていないという数値ではないでしょうか。この値から化学流産ということですが、コッコさんの場合は元々着床しておらず、流産とはいえない状態だったのかと思います。
エストラーナR テープを増やされていますが、E2の値が移植6日前で124、移植当日で125pg/mlなので、値が低いとは思えず、なぜ増やされたのかは私にはわかりかねます。また黄体ホルモンの9ng/mlという数値もそんなに低い値とは思いません。ホルモン補充に多く用いられる腟坐薬は子宮に直接作用するので、組織レベルで測らない限り、その薬が効いているか血中濃度を測っても正確な評価はできないといわれています。使う薬、体重や吸収率なども個人差もあるため、基準値というのはありません。たとえば、1や2といったかなり低い数値でも妊娠する方はいらっしゃいます。低いからといって妊娠できないというわけではありません。
胚移植に適したホルモン値についてのお考えを教えてください。
福井先生●先ほども述べた理由により、まだ指標として確立されてなく、移植に適したホルモン値の基準というものはありません。正常値というのもありません。たとえ低い値だとしても、局所濃度が高ければ妊娠します。単に子宮での濃度を測ることができないので、評価できないということです。
今後の治療方法などアドバイスをいただけますか。
福井先生●コッコさんの場合はホルモン値に起因するのではなく、卵子の質によるものだと思います。卵子のグレードが最も良かったとしても、必ずしも妊娠するということはありません。それよりも移植4日後から不正出血が続いたことが気になります。子宮筋腫核出術を行っていることもあり、筋腫が再発したのではないかということも気がかりです。不正出血の原因がホルモンの異常によるというより、筋腫・ポリープや炎症など器質性の原因によるものと考えられますので、治療を継続する前にまずはしっかりと検査をすることをおすすめします。