胚盤胞を2個移植しても結果が出ません。ほかにできる検査はありますか。
胚盤胞を2回移植して、どちらも結果は陰性ということですが。
小林先生●このような場合、まず「卵は大丈夫か」「撒く時期は合っているか」「畑は大丈夫か」という3つの要素を考えます。
「卵」つまり胚盤胞のグレードは申し分ない。年齢的にもまだ32歳ですから、3個受精卵があったら2個は正常、1個は異常という確率です。その確率ならPGT -A検査まで進むことなく、良好胚から移植していくという方針でいいのではないでしょうか。
次に「撒く時期」。これは移植するタイミングのことですが、この方はERA(子宮内膜着床能検査)を受けて着床の最適な時期も調べていらっしゃいます。
あとは「畑」、つまり受精卵が着床する子宮内の環境ですが、これについては子宮鏡検査で慢性子宮内膜炎が見つかったとのこと。内膜に炎症があると着床に悪影響を及ぼすことがありますが、薬を使ってきちんと治療されていますから問題はないでしょう。
検査の選択や実施する時期も妥当で、主治医は正しい判断をされていると思いますね。
次の移植へ向けて、ほかにやれることやできる検査はありますか。
小林先生●免疫学的検査はすでに実施されているのでしょうか。これは採血でTh1細胞とTh2細胞の比率を調べる検査。Th1が高くなるほど胎児や胎盤などを排除しようとして、着床不全を引き起こしてしまうと考えられているのですね。Th1/Th2の比率が10・3以上だった場合は、タクロリムスなどの免疫抑制剤を処方して、その比率を調整します。
ただ残念ながらこの検査や治療は保険適用になっていません。もし自費で不妊治療をされているのなら、受けてみる価値はあると思います。
また、この方は身長159cmで体重64kgと少し肥満ぎみのようです。もう少し体重をコントロールすればPCOS(多囊胞性卵巣症候群)も改善されるはず。PCOSの方は卵子の質が良くない傾向がありますから、食生活や運動など、生活改善をするのも妊娠への近道になると思いますね。
ほかに着床をしやすくする方法として子宮内膜を刺激する施術があります。現在、保険診療でできるのは通気か子宮鏡。移植の数日前に何かしらの方法で子宮内膜を刺激して表面を少し傷つけることで、受精卵が着床しやすくなることがあります。