【Q&A】PGT-A、スパームセパレーターについて~俵史子先生

セナさん(43歳)

PGT-Aのリスクの確率はどれくらいですか?
スパームセパレーターはオススメですか?
いずれも卵への損傷リスクや心疾患の可能性の心配があり、体外受精を希望していますが、顕微授精の方が良いのでしょうか?

俵史子先生にお伺いしました。

俵IVFクリニック 俵 史子 先生
2007年静岡市に開業。浜松医科大学に生殖周産期医学講座(寄附講座)を開設し、不妊治療後の妊娠・出産がより安全なものになるよう研究を行っている。また臨床教授、非常勤講師として将来の不妊治療医の育成にも従事。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

■スパームセパレーターについて

一般論になりますが、精子調整を行う際、遠心分離を行わないことで活性酸素発生やDNA断片化が起こりにくくなることを期待したデバイスです。
リスクとしては、従来よりも精子回収量が少なくなることが多く、以前は体外受精が選択できていた方でも顕微授精が必要となる可能性があります。
セナさんは体外受精を希望されているということなので、希望に添えなくなる可能性はあると思います。

■PGTーAについて

着床前遺伝学的検査(PGT: preimplantation genetic testing) は受精卵の段階で染色体や遺伝子の検査を行うことです。
ART治療で妊娠が成立しても初期流産、反復流産、反復ART不成功となることは、決してまれではありません。
さらに初期流産の70-80%は染色体の異数性及び構造異常が原因であることも分かってきました。
そのため、本検査で異数性のない胚の移植ができれば、流産率の低下、生産率の向上などART治療成績の改善が期待されます。

私がリスクとして考えることは下記のとおりです。
・本診断を受けても、染色体異常以外の原因による着床不全や流産を完全に防ぐことはできません。
・本診断は胚の時点での異常を検査するもので、出生児に全く障害がないことを保証するものではありません。
・現時点では多くの報告においてPGT-A胚妊娠における出生児の先天異常は増加しないとされていますが、児の長期予後に ついてはまだ明確になっていない点があります。
・さらに正確な染色体検査を希望する場合は、羊水検査などの出生前診断が考慮されます。
・出生児の性別を選ぶことはできません。

その他、
・この検査では、微細な染色体異常、均衡型構造異常、倍数性異常(検査会社による)、遺伝子異常などは検出できません。
・胚の細胞を一部採取する検査ですので、胚へのダメージが起こる可能性は否定できません。
つまり、正倍数性を移植をおこなうことで、必ず妊娠し正常な児が得られる。ことが保証されたわけではないということになります。
また、PGT-Aを希望されても胚盤胞が得られなければ検査を行えません。

PGT-Aが受けられたとして43歳の方で正倍数性胚が得られる可能性は文献的には10%程度です。計算上は10個程度の胚盤胞を検査できたとして、そのうちの1個で正倍数性胚が得られる、という計算になります。

諸外国においても、採卵で得られる胚数が少ない場合には、PGT-Aは推奨しないとしているところがあります。

セナさんにとってこの検査を受けるメリットがあるかどうか、まずは考えていただくのがいいと思います。
日本産科婦人科学会ホームページに、一般の方が視聴できるPGT-A,SRに関する動画があります。
心配されているリスクに関しても説明されておりますので、さらに理解が深まるかもしれません。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。