これから赤ちゃんを迎えるためには、まずは自分自身が健康な体でいることが大切です。その土台をつくるのは、毎日の食事で摂る栄養素。院長の佐野麻利子先生と、管理栄養士の篠原絵里佳さんに、妊娠しやすい体をつくるための栄養について伺いました。
自分の体が栄養不足だと、赤ちゃんも栄養不足になる
佐野先生●当院は若いうちから自分の健康を管理し、望んだ時に妊娠できる体づくり「プレコンセプションケア」を推進しています。そのなかでも特に大切にしているのが栄養管理です。
篠原さん●食事で体内に取り入れた栄養素には、使われる優先順位があります。一番は生命の維持。その後、筋肉、肌、髪、子宮などに使われます。そもそも自分の生命を維持する栄養素に不足があると、子宮の中で赤ちゃんを育てることもできません。妊娠には自分の体を必要な栄養素で満たしておくことが大切です。
佐野先生●実際に栄養素の摂取量が足りていないと卵子の発育に影響したり、妊娠しても赤ちゃんが小さく産まれる低出生体重児や早産など産科的なリスクが高くなります。ひと昔前は「小さく生んで大きく育てる」といわれていましたが、今は小さく生まれると将来、生活習慣病になりやすいことがわかっています。
篠原さん●「新型栄養失調」といって、食べていても、必要な栄養素が不足している人も増えています。理由の一つは、朝食を食べないこと。朝食を食べないと、冷えや免疫力低下を招く低体温や、メラトニン(強力な抗酸化作用があるため卵子の質の改善にかかわる効果が期待されている)の不足、昼食後に血糖値が急激に上昇し糖化につながります。また、パンや麺類が多い食事では栄養が偏り、「たんぱく質(魚、肉、大豆製品、乳製品)」が不足しがちです。たんぱく質を多く含む食品には妊娠に必要なビタミンやミネラルも含まれています。毎回の食事でしっかり摂りましょう。
佐野先生●妊娠には「ビタミンD」「亜鉛」「鉄」も欠かせません。さらに「葉酸」も必須です。体内に活性酸素を生むホモシステインの増加を防ぎ、胎児の神経管閉鎖障害などを予防する働きがあります。
自分の生活を見直して健康で妊娠しやすい体をつくる
篠原さん●最近は糖質制限や空腹ダイエットなど、いろんな情報が出回っています。本当はもっといろいろな栄養素が必要なのに制限するダイエットをするなど、その人に適さない情報を取り入れて、不調の原因につながっていることもあります。
佐野先生●「自分は食べすぎだから、食べないようにしなきゃ」など、間違った思い込みをしている人も多いです。ちゃんと食べないと逆に太りやすくなったり、卵子にも栄養が届かなくなります。
篠原さん●まずは朝食を食べて、バランスよく栄養素を取り入れる工夫をしましょう。栄養の本などを参考にするといいですね。
佐野先生●それでも自分で栄養管理が難しいという人は、当院の栄養相談を利用してもらうのも一つです。
篠原さん●栄養相談ではその人の食の好みや生活習慣に合わせ、メニュー構成や食材の選び方、調理法などをアドバイスしています。たとえば、主食、副菜、主菜で揃えるといろんな栄養素が摂れます。また、魚にはビタミンD が豊富に含まれているので、魚を調理したり、食べる機会が少ない人は、外食の時に選ぶようにするといいと思います。
佐野先生●栄養相談を通じて心がけているのは、「冷えが改善した」「朝の調子がいい」など、自分の体調に気づいてもらい、より健康になる体づくりを続けてもらうことです。実際に妊活中の人では、検査を行うと排卵しにくい人が食生活を整えることで、順調に排卵するなどの体感を得ています。
普段の食事or サプリメントどちらが効果的?
1日3 食バランスよく食べて、普段の食事で体に必要な栄養素を満たしてあげることが大前提です。そのうえで、妊娠にも欠かせない「葉酸」「ビタミンD」「鉄」「亜鉛」など、不足しがちな栄養素をサプリメントで補っていきましょう。なかでも「葉酸」は食事だけでは必要な摂取量を補いにくいので、普段の食事とサプリメントの摂取を並行しておすすめしています。
「運動+栄養」で冷えに負けない体をつくる
●体を動かす
体の熱を上げて代謝や血の巡りを良くします。
●リラックスする
ストレスは筋肉や血管を収縮させ冷えの原因に
●体を温める
寒い場所を避けるなど環境調整や服装を工夫して、体の熱を外に逃さないのがポイント
●たんぱく質+鉄を摂る
朝食はもちろん、毎食しっかりたんぱく質を。赤身の牛肉や魚は鉄も豊富に含んでいるので、ツナサンドやツナおにぎりもおすすめ