【Q&A】卵管水腫切除の必要性について~吉田仁秋先生

よっぴさん(39歳)

過去に子宮外妊娠をして片側卵管切除しました。
その後、子宮卵管造影にてもう片側の卵管水腫が見つかり、IVFにステップアップしました。
顕微授精で第一子を授かりましたが、その後、5回の胚盤胞移植を行いましたが妊娠に至りません。
ここにきて医師から卵管切除手術をすすめられましたが、医師である夫からは猛反対されています。
理由は、
①なぜもっと前から手術をすすめなかったのか、確証もなく消去法では手術の意味がない
②良好胚も残っておらず、年齢的に厳しいのに今さら手術をしても妊娠は望めない
とのことです。
出産後、移植前のエコーでほぼ毎回子宮に粘液が溜まっており、このまま移植を繰り返しても難しいんじゃないかと思っています。
年齢的に厳しいのはもちろんわかっていますが、できることはしたいと思っていても夫には理解をしてもらえず、悩んでいます。
夫が言うように、本当にデメリットしかないのであれば手術も妊活自体も諦めたいのですが、なかなか希望を捨てられずにいます。

吉田先生にお聞きしました。

仙台ARTクリニック 吉田仁秋先生
独協医科大学卒業。東北大学医学部産婦人科学教室入局、不妊・体外 受精チーム研究室へ。米国マイアミ大学留学後、竹田綜合病院産婦人科 部長、東北公済病院医長を経て、吉田レディースクリニックを開設。2016 年1月に「仙台ARTクリニック」として移転・リニューアルオープン。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
◆相談内容や治療歴を見て、どのような印象を持たれましたか?
5回の反復不成功でなかなか難しい症例という印象でした。

◆「子宮内に粘液が溜まっている」そうですが、原因や疾患等の可能性について教えてください。
最も考えられるのは、卵管水腫の子宮内への移動です。
その他、子宮内の炎症(子宮内膜炎)により、水分が蓄積されることも考えられます。
さらに、子宮筋腫の編成により水分が溜まる場合も稀ですが起こり得ます。
子宮内の粘液貯留はどの程度かにもよりますが、元々子宮内は内膜に囲まれ、多少水分を含んでいるのが一般的です。
月経を繰り返すことにより内膜が剥落し、月経の経血が排出されやすくするために水分が必要となるためです
◆子宮内に粘液が溜まっていると、着床しづらいのでしょうか?
子宮内の水分が粘液として溜まる場合は、受精卵も粘液により着床しづらくなるのが一般的です。
主治医からすすめられた卵管切除手術を受けるかどうかについて、夫婦で意見が分かれているようです。先生なら患者さんに卵管切除手術をすすめますか?
ご主人が仰るようにもう少し早く(2〜3回不成功の時点で)水腫切除をお勧めするのが良かったかもしれません。
しかし、今後胚移植を希望する場合には切除する方が着床の可能性は高くなると考えられます。
◆ 今後の治療の進め方や、治療の向き合い方等について、アドバイスをお願いします。
現在は子宮内の環境が着床に適している状態かを判断するために、ERA(着床の窓が合っているかを判断する検査)があります。
また、元々子宮内は乳酸菌で覆われているのですが、他のバクテリアが占める割合が高くなると着床しづらくなることが考えられます。
よって、まずは子宮鏡によって内膜の炎症やポリープ、 疾患等がないか確認いただき、ERA、EMMA、 ALICE等の検査によって異常があれば乳酸菌膣剤等の投与によって着床率を上げていくのが一般的と考えます。
それでも着床しない場合には、残っている胚はグレードの 低い受精卵との事なので、2個移植もご検討されてはいかがでしょうか。
よっぴさんのご年齢を考慮し、早めのご決断をいただくとともに、妊娠・出産を迎えられるよう祈念いたします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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