アンタゴニスト法は卵巣の機能が低くてもできますか?
高橋ウイメンズクリニック 高橋 敬一 先生 金沢大学医学部卒業。国立病院医療センター( 現・国立国際医療研究センター)、虎の門病院を経て米国ワシントン大学に留学。1996 年虎の門病院に復帰した後、1999 年千葉市に不妊治療専門『高橋ウイメンズクリニック』を開院。2014 年ベストドクター認定( ベストドクターズ社)。
相談者 : Karinさん(39歳)AMH 値が0.5 ~ 0.7ng/ml と低く、両側の卵管も閉塞しているため体外受精を行っています。1回目はクロミッド®で2 個採卵しましたが胚盤胞に育ちませんでした。2 回目はレトロゾールで2 個採卵し、グレード2を新鮮胚移植しましたが着床せず。3 回目も同じレトロゾールで臨みましたが排卵し、採卵はキャンセルになりました。低刺激法は採卵日の調整が大変です。次はアンタゴニスト法を試したいと思いますが、低AMH でもできますか。また生理を止めて卵巣を休ませるメリットはありますか。
低AMH のKarin さんはアンタゴニスト法をできますか?
高橋先生● HMG -アンタゴニスト法は、卵子が1~2個しか採れない卵巣機能が低い人でも可能です。ただしデメリットとメリットもあります。まず、アンタゴニスト法にしたからといって必ずしも採れる卵子の数が増えるわけではありません。また、注射をたくさん打つアンタゴニスト法は、低AMH値の人に行うと、そのあとの周期で疲れが出てしまい、卵子が育たなくなることがあります。連続して行うのは現実的ではありません。
一方、アンタゴニスト法は採卵日の調節がしやすいので、そこを求めているKarin さんにとってはメリットになるでしょう。Karin さんに必要なことは、生理中に超音波検査を受けて、大きくなりそうな卵子が普段よりも多いようだったらアンタゴニスト法を選び、卵子が少ないようだったら低刺激法を選ぶという対応が必要でしょう。
卵巣を休ませるメリットは、39歳のKarin さんにはありますか。
高橋先生●低AMH のケースでは生理を止めても卵巣の反応が良くなるという保証はありません。年齢とともに卵巣の機能は低下していくので、生理を止めるメリットは少ないでしょう。むしろ治療を続けながら、卵子が3~4個できそうな時にHMG -アンタゴニスト法をするとよいと思います。人間の体は、いつも同じ反応とは限らず、悪い時もありますが、いい時もありますからね。
また、低刺激法で使う薬については、レトロゾールよりもクロミッドRのほうが排卵をコントロールしやすいのです。排卵しやすいKarin さんにはクロミッドRがいいかもしれません。
検査や治療について、今後のアドバイスをお願いします。
高橋先生● Karin さんの一番の課題点は、卵巣の機能が低下していること。治療もそこに注力することになり、採卵も胚移植も1回1回が大切に。貴重な胚を着床につなげるためにも、卵管造影検査と子宮鏡検査をもう一回受けて、卵管と子宮の評価をしておくとよいかもしれません。卵管閉塞とのことですが、閉塞する場所を調べて、もし卵管水腫だったら対処する。次に慢性子宮内膜炎(CD138)と子宮内フローラ検査も行い、正常か異常かを調べておく。採卵後の胚移植を視野に入れて、着床の環境を万全に整えておくという考え方です。妊娠への可能性はまだあると思いますから、治療を頑張ってください。