胚盤胞の増やし方と最適な移植日について

胚盤胞まで育つ受精卵を増やすにはどうしたらいい?

臼井医院 婦人科 リプロダクション外来 臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。
相談者 : ゆたさん(31歳)顕微授精で治療中。1 回目は体外受精(アンタゴニスト法)にて9個採卵し、受精したのは2 個。そのうち凍結胚盤胞を1 個移植しましたが陰性でした。2 度目はショート法で11 個採卵し、受精したのは7個。でも胚盤胞は4AB の1 個だけでした。受精卵の数の割に胚盤胞まで育つものが少なく、増やしたいです。また、通院中のクリニックは、移植周期のD15に子宮内膜を確認し、D19 かD20 に移植日を決めます。血液検査でホルモン値を見ないで決めることに不安があります。
受精卵の数に比べ、胚盤胞まで育つものが少ない理由には、どんなことが考えられますか?
臼井先生●受精卵が胚盤胞まで育つかは個人差が大きいです。また、同じ人でも周期によって卵子の質が異なることもあります。
 何らかのトラブルが原因だとすると、ゆたさんはPCO(多囊胞性卵巣)の可能性があります。PCOとは卵巣に小さな卵胞がたくさんできている状態を指します。PCOの患者さんの場合、採卵するとたくさん卵子が採れるものの、卵子の質が低い傾向にあるため、胚盤胞まで育ちにくくなります。
胚盤胞を増やすにはどうしたらいいでしょうか?
臼井先生●どの時点で成長が止まってしまうかによって治療法が異なります。
 もしPCOの場合は、E2(エストラジオール)という卵胞を発育させるホルモンを投与することで、卵子を成熟させてから採卵する方法があります。
受精卵が分割途中で成長が止まってしまう場合の治療法はありますか?
臼井先生●初期胚を移植する方法があります。また一度凍結して別周期に戻すことも可能です。
 受精がうまくいかない場合は、顕微授精の際にイオノフォアという薬剤を使い、卵子を活性化させることで受精率を上げる方法があります。

 フラグメントが多くて胚盤胞まで育たない時は、前核期の時期に透明帯を外し、それから培養。この処置をすることでフラグメントが減ります。
ゆたさんが試してみるといい、ほかの治療法はありますか?
臼井先生●卵巣の刺激方法を今までと違う低刺激や、PPOS法を試してみるのもいいと思います。PPOS法とは卵巣刺激をする際に黄体ホルモン剤を併用する方法です。排卵を抑えつつ、子宮環境を整えることができます。
移植日はどうやって決めますか?
臼井先生●E2のホルモン値を測って判断するか、子宮内膜だけをみて決めるかは、医療機関や先生の考え方やご経験などによってさまざまです。ちなみに当院では、E2値を測定し、子宮内膜の厚さを測ります。そのうえで子宮内膜のコンディションをよく確認し、移植日を決めています。
 まだ31歳なのと、1つでも胚盤胞になる受精卵があるので、妊娠できる希望は大いにあると考えられます。自信をもって治療をしてくださいね。
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