浅田先生に聞いてきました。
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
4月から不妊治療に保険が適用されたため、今回の採卵は、保険で行いました。
刺激の方法は、クロミッドを1日1錠×10日とhmg150を隔日で4回でした。
ブセレリン開始日時の指示を医師が間違えたため、hmgの回数が減ったこと、保険適用内でかなり刺激が少ないこともあったのか、卵胞が右に四つしかできませんでした。採卵には至りましたが、成熟卵は結局一つだけしかとれず。未熟卵と合わせて2つだけの採卵となりました。
病院からは、未熟卵は顕微授精できないし、1つにだけ顕微授精してもあまり意味がない、とのことで、体外受精を勧められ、お任せしました。
もし、1つでも胚盤胞まで育てば、凍結融解胚移植となる予定ですが、おそらく、今回は、胚盤胞まで育たないと思うので、次回の採卵を考えはじめています。
やはり、保険内でできる刺激方法では、あまりよい採卵ができないのでしょうか?
保険外の治療にも、以前一度取り組みましたが、採卵数5個、顕微授精の末、1つだけの胚盤胞を融解移植。
着床はしましたが、全く育たず終わりました。
どのような受精卵がどのようなときにできるか、それはわかりません。受精卵1個ずつの遺伝子の構成は全部異なり、兄弟姉妹としての違いがあります。どのような受精卵が赤ちゃんまで育つのか、それは誰も予想できません。それが予想できたら、不妊治療は本当に確実なものになると思います。
保険診療がよい、悪い、妊娠率が高い、低い、ということではなく、こういったことを考えていただきたいと思います。
そもそも保険診療は全国どこでも誰が行っても同じ治療をするということがコンセプトとなっていますので、高齢で採卵の数が段々と取れなくなった方には不向きです。
保険診療での卵巣刺激は健康保険法等で決まり、厚生労働省が定めた用法用量の範囲内でしか治療を行えませんので、非常に限られた治療法になります。
質問者さんはクロミッドを10日間服用されていらっしゃいますが、保険では5日間となっていますので、これで保険が通るかどうか疑問ですし、すでに保険診療よりも強い刺激をされています。
卵子1個だけの顕微授精では行う意味がない、というのは私にはよくわかりません。当院では顕微授精の方が通常の媒精よりも受精率がよいので、卵子が少ないときにはより確実に受精卵を得るために顕微授精を選択することもあります。
保険診療では、受精障害を確認できなければ顕微授精はできません。前回受精しなかったということがあって初めて顕微授精ができます。顕微授精かどうかを選ぶ、という発想は保険診療にはありません。
残念ながら、グレードのよい胚盤胞を得る方法はありません。親とは違った形で、卵子、精子の遺伝子の構成が組み変わっており、それが受精して一つの受精卵の遺伝子の構成となる訳です。遺伝子の構成がよいか悪いかによって、どこまで育つかが決まるので、人の手では操作できません。
高齢になるにつれ成熟卵も取れにくくなるため、自費診療でホルモン検査をした上で、より卵巣予備能に合った卵巣刺激をした方が、より多くの成熟卵を取れる可能性があるので、治療成績からいうと質問者さんには自費診療の方が合っているのではないでしょうか。