タイミング法で卵胞が育ちすぎ。
リセットしかないの?
久保みずきレディースクリニック 石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、2008 年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科を担当する。
相談者 : アイさん(39歳)2 人目を自然妊娠したものの、最初から育たず流産。その後なかなか授からず、人工授精4回を経て、クロミッド® で卵胞を増やしてタイミング法に戻しました。前回は卵胞が2つ育ちましたが妊娠せず、今回は卵胞の育ちが悪くD12 で注射後、D16 で左に4つ、右に1つ。しかし、育ち過ぎたためリセットとなりました。リセットのお話し後にクロミッド® を飲み始めていないし、諦めきれずリセットの薬を飲めません。今周期は何もできないのでしょうか。
卵胞の育ち方は周期ごとに違うのですか?
石原先生● 生まれた時に約200 万個あった原始卵胞は、初経を迎えるころには約30 万個になり、そこから毎月500 〜1000 個の割合で減少していきます。排卵は、そのうちの1個が選択されるわけですが、卵胞の状態は周期によって違います。これはタイミング法や人工授精、体外受精の卵巣刺激法でも一緒です。また、卵胞が急速に減りはじめる30代後半〜42歳くらいで、ある程度の数の卵胞が残っている方は、特に卵胞の成長スピードなどにばらつきが出やすい印象はありますね。
卵胞が5つ育ったそうです。リセットが必要な理由を教えてください。
石原先生●タイミング法や人工授精などの一般不妊治療では、卵胞を育てる目的で内服薬や注射薬を使うことがあります。ただ、卵胞が育ちすぎてしまうと、妊娠後に卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が重症化して長期入院を余儀なくされたり、双子や三つ子といった多胎妊娠につながりやすくなります。なかでも多胎妊娠は、切迫流産や早産、妊娠高血圧症候群などの合併症を招き、母体と胎児ともにリスクが高くなります。また、生まれてきた赤ちゃんにも人工呼吸器が必要になるなど、リスクが生じることもあります。担当の先生は、このような理由からOHSSや多胎妊娠を防ぐために、リセットをすすめられたのだと思います。
人工授精を4回経て、タイミング法に戻ることについて、どう思われますか?
石原先生●治療をどこまで望まれるかは人それぞれですので、アイさんの選択も当然ありだと思います。ただ、年齢が高くなってきていますし、1年ごとに妊娠率は低下していきます。ご主人の精子の状態も基準値ギリギリとのことですので、タイミング法では難しいかもしれません。お2人目をどの程度希望されているかによりますが、39歳で人工授精を4回されて妊娠されないのであれば、体外受精を検討されたほうがいいでしょう。
また、「今周期は何もできないの?」という質問については、リセット期間から何日も経過していると自然に排卵していることがあります。そうなると今周期の治療は難しいですね。ただ、ここで妊娠してしまうと多胎妊娠になる可能性があります。体外受精は、基本的に1個の受精卵を移植するので、多胎妊娠になる可能性はかなり低いです。一般不妊治療ほど多胎妊娠のリスクが高いことをぜひ知っておいてほしいと思います。