体外受精では、妊娠率を高めるためにお薬を使った卵巣刺激を行い、良好な卵子をできるだけ多く採取することが理想とされています。その決め手となる卵巣刺激はどんな方法があり、どのような基準で選ばれるのでしょうか。うめだファティリティークリニックの井川佳世恵先生に教えていただきました。

うめだファティリティークリニック 井川 佳世恵 先生 産婦人科医として18年以上の経験を積んだ後、大学医局の頃からお世話になっている山下院長のもとで不妊専門医療を学び、2021年4月から当院の常勤医として診療にあたっています。患者さまにわかりやすい説明と、お一人ひとりの思いに沿った診療を心がけ、女性ならではの目線を活かしてスタッフとともに患者さまのサポートに取り組んでいきます。

卵巣刺激の方法はおもに3つ

体外受精の卵巣刺激は、良好な卵子が採取できるよう、できるだけ多くの卵胞を育てる目的で行われます。卵巣刺激は、高刺激、中刺激、低刺激に分けられます。高刺激(ショート法、ロング法)は、卵胞を育てる注射薬、卵胞を成熟させる注射薬、自然排卵を抑える点鼻薬の3つを使います。卵胞が安定して育ちやすく、排卵日もコントロールできるので、その方の予定に合わせて採卵日を設定できます。その反面、お薬の影響で卵巣過剰刺激症候群のリスクは高くなります。

中刺激(アンタゴニスト法)は、服用薬と注射薬のみで刺激を行います。卵胞が育ちやすく、卵巣過剰刺激症候群のリスクを回避できるメリットがあります。また、低刺激は服用薬のみや、注射薬を1日おきに使い、自然に近い排卵をうながします。体への負担は少ないですが、採卵数が1〜2個と限られます。そのため、当院は治療の効率が高く、海外の主流でもある高刺激と中刺激を中心にしています。

PPOSという新しい方法にも期待

卵巣刺激の方法は、年齢や卵巣の予備能(AMH)、または胞状卵胞数(AFC)を目安に決めていきます。たとえばAMHが5ng/ml以上で、卵巣機能が高い方やAFCが10個以上の方は、高刺激である程度の数の卵子が採れる可能性があります。また、40歳前後でAMHが1〜2ng/ml程度の方は、卵巣機能も中程度の状態と考えられるため、中刺激をおすすめしています。

ただ、このように選ばれた卵巣刺激が必ずしもうまくいくとは限りません。1回目の卵巣刺激の成績によっては、違う方法に変更することもあります。特に多囊胞性卵巣の方はもともとAMHが高く、採れる卵子の数は多くても、卵子の質がともなわないなど、卵巣刺激がうまく機能しないことがあります。このような場合は、「PPOS」(卵巣刺激の時に黄体ホルモン剤を併用する)という新しい方法も一つの選択肢になります。当院は1月に導入したばかりですが、高刺激、中刺激に比べると、採卵できる卵子の数はやや劣るものの、複数の卵胞が均一に育ち、卵子の質が良くなる印象があります。さらに、卵巣過剰刺激症候群で卵胞が育ちすぎる方への効果も期待できます。

保険適用で20代にも身近な治療へ!

卵巣刺激で卵胞が十分に育ったら、次は採卵を行います。超音波で確認しながら卵胞に針を刺し、ポンプで卵子の入った卵胞液を自動吸引します。採卵できる卵子の数によりますが、通常は10分程度で終了します。採卵前に局所麻酔を行いますので、痛みの心配はほとんどありません。心配な方は静脈麻酔もできますので遠慮なく相談してください。

体外受精が保険適用になり、経済的な負担はかなり軽減されました。いままで治療を見送ってきた方はもちろんのこと、妊活中の20代の方にも、「将来、後悔しないための選択肢」として、体外受精を身近な治療にしてほしいと思います。若いうちは卵子の質が良く、体外受精の妊娠率も高いですが、年齢を重ねるほど低下します。特にお子さんを2〜3人考えている方は、早いうちに体外受精をして、残りの受精卵を凍結しておくことができれば、次の妊娠の予定も立てやすくなると思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。