40歳を過ぎて体外受精にトライする際、気になることの1つが採卵時、何個卵子が取れるかです。高齢になってからの卵巣刺激についてどんな方法があるかを、あいだ希望クリニックの会田拓也先生に教えていただきました。
あおさん(43歳)43歳でAMHが0.29と低いです。161cmで66㎏。体外受精をする前に10㎏のダイエットをしました。今まで4回採卵し、一番多くて3個しか採れません。3回初期胚移植(新鮮胚1回、凍結2回)をしましたが、すべて陰性。初期胚のグレードは1や2と良いものでした。いくつかの卵子を培養しましたが、細胞のない胚盤胞や桑実胚で成長が止まるなど、なかなか胚盤胞になりません。これらの初期胚時のグレードは3でした。
低AMHの場合は高刺激、中刺激をしても採卵数が増えづらいという理由でクロミッドしかやったことありません。年齢的な要因が大きいとは思いますが、たとえば他の刺激法にすることで、採卵数は変わらなくても卵胞の成熟具合が好転するなどの可能性はありますか。あったらぜひ知りたいです。
低AMHの場合、卵子の在庫は少ないので強い排卵誘発剤を使うのは避けた方がいいでしょう
あおさんのように年齢が高めで、AMH値が低い場合は、卵巣内に残っている卵子の在庫数が少ないと考えられます。こういった方に強い排卵誘発剤を使うのは避けた方がいいでしょう。
本来、人間の体は、たくさんある卵子の中からその時期に一番良い卵子を自然と選び出し、排卵できる状態にまで育てるように作られています。ただ、高齢になると卵子の総在庫数が減ってくるため、その中の「一番いい卵子」を選んで育てるため、若い時と比べるとどうしても卵子の質が低下する傾向にあります。
さらに、AMHが低い方に強い排卵誘発剤を使っても卵巣が反応しづらくなっているため、 FSH(卵胞刺激ホルモ)が常に高い状態になってしまいます。そうなると、本来持ち合わせている「一番いい卵子」を選び出す力が発揮できなくなり、結果としていい卵子が育たなくなります。
また薬の力で無理に育てた卵子を採卵していると、卵子全体の質の低下につながるともいわれています。
そのため、あおさんの場合は、できるだけ刺激の少ない方法で卵子を育てる方がいいでしょう。
クロミッドは低刺激法ですが、子宮内膜が薄くなる可能性があります
今、あおさんがやっているクロミッドを使った卵巣刺激法は、注射を使った強い卵巣刺激法と比べると、FSHが高くなりすぎず、卵巣にやさしい、マイルドな刺激法になります。ただ、クロミッドを服用していると子宮内膜を薄くするという副作用があるので、移植は別周期に行った方がいいでしょう。
選択肢としては、完全自然周期法かレトロゾールを服用する方法があります
あおさんは低AMHなので、薬の力で無理に育てると卵子全体の質の低下につながります。そのためできるだけ刺激の少ない卵巣刺激法を選択するのがいいと思います。
まずは完全自然周期法という方法があります。さきほども少し触れましたが、「一番いい卵子を選んで育てる」という、本来、人間の体が持つ摂理(力)にまかせて、自力で卵子を育てて採卵するやり方です。
もう1つの選択肢としては、「レトロゾール」という薬を使い、卵子を育てて採卵をする方法があります。レトロゾールはクロミッドと同じでマイルドな刺激で卵胞を育てる薬です。服用してみてFSHの数値が高くなりすぎないようであれば、有効な方法です。さらにクロミッドのように服用後に子宮内膜が薄くなるということが少ないため、受精卵が着床しやすくなるという特徴もあります。
できるだけ痛みを軽減してストレスのない採卵方法を
また、採卵=痛みをともなうと思うと採卵自体がストレスになってしまうことも少なくありません。そのため、できるだけご自身がストレスなく採卵できることも重要です。
ちなみに当院では「できるだけ痛みが少ない採卵」を心がけ、採卵に使用する針も23ゲージというかなり細い針を採用しています。これは採血で使う針と同等の細さになるため、患者さんからは「ほとんど痛みがない」と言われています※。※痛みの感じ方には個人差があります
無麻酔で採卵できるため、採卵にかかる時間はわずか数分。また麻酔をすると覚めるまでに一定の時間が必要になりますが、その時間が必要ありません。採卵後に少し安静にしていただき、問題がなければ帰宅できるため、時間を有効に使えるというメリットもあります。
あおさんは43歳という年齢のことを気にされていますが、⒦の年齢であればまだ妊娠、出産の可能性はあります。実際に当院でも43~45歳の方で、完全自然周期やレトロゾールで良い卵子を育てて2個ほど採卵でき、妊娠に至ったケースもあります。
自分にはどんな卵巣刺激法が選択できて、良い卵子を育てるにはどれが一番いい方法かを、主治医の先生に相談してみてくださいね。