体外受精の移植方法について

今年4月から生殖補助医療(ART)が保険適用の対象になります。そこであらかじめ知っておきたいのが体外受精の移植方法です。移植方法を選択するときの条件や、妊娠率が高いとされる移植方法、さらには治療を諦めないことの大切さについて、IVF大阪クリニックの福田愛作先生に教えていただきました。

IVF 大阪クリニック●福田 愛作 先生 関西医科大学卒業、京都大学医学部婦人科学産科学教室入局。市立舞鶴市民病院産婦人科医長、京都南逓信病院産婦人科医長、1998 年 より IVF 大阪クリニック副院長、2003 年より院長に就任。

Q.体外受精の移植方法には、どのようなものがありますか?

体外受精の移植方法には、採卵周期に胚移植を行う「新鮮胚移植」と、凍結した胚を融解して胚移植を行う「凍結胚移植」があります。

また、移植する胚は、採卵後2〜3日目の胚を用いる「分割胚移植」と、採卵後5日目の発育が進んだ胚を用いる「胚盤胞移植」の2種類に分けられます。

Q.移植方法はどのように決まるのですか?

胚盤胞移植はある程度の数の卵子が採れ、胚盤胞まで発育が期待できる方に行います。そのため、若い人や年齢が高くてもある程度の数の卵子が採れる可能性がある方が対象になります。

なぜなら受精卵から胚盤胞に発育できる確率は50%程度です。もし1〜2個しか採卵できない場合は、胚移植ができない可能性が高くなります。

年齢が高い方や、以前の採卵で胚の質が不良のため、胚盤胞まで発育が期待できない方は、胚盤胞より早い時期の分割胚で移植することが選択されます。

妊娠率が高い移植方法はありますか?

胚盤胞まで発育が十分に期待できる場合は、胚盤胞を移植するのが妊娠率は高くなります。 また、1個移植することがほとんどですので、双胎の心配もありません。ただし、これは卵子が多く採れる方の場合です。

当院は、ある程度の卵子の数が採れて、卵巣過剰刺激症候群や子宮内膜に問題がなければ、1回目の体外受精は(胚盤胞の)新鮮胚移植をおすすめしています。自分のホルモンで着床しやすい子宮内膜に整えることができますし、採卵周期に移植するので妊娠が成立するまでの時間も短くなります。

また、多くの卵子の数が期待できない場合や、年齢が高い方については、分割胚の新鮮胚移植をおすすめします。年齢が高い方には分割胚を凍結し、ある程度の数の卵子を貯めてから複数個を移植する方法もあります。ただ、もともと胚盤胞まで発育が期待できない胚の質であれば、凍結することによって胚の質が低下しやすくなります。当院では、分割胚の新鮮胚移植によって、なかなか妊娠が成立しなかった44〜45歳の方でもたくさん妊娠されています。

一般的には、採卵した胚を全部凍結(全胚凍結)し、後から凍結胚移植で戻す方法が近年の主流になっています。ただ、当院は全胚凍結を行わず、移植できる状態であれば、できるだけ新鮮胚を移植して妊娠率を高めています。(もちろん余分な胚は凍結し、また、卵巣過剰刺激症候群の場合は凍結せざるを得ないこともあります)

Q.分割胚移植と胚盤胞移植では妊娠率が大きく違うのでしょうか?

胚盤胞移植のほうが妊娠率が高いのは確かです。しかし、それは胚盤胞に発育する胚があっての場合です。もし胚盤胞まで発育しなければ、胚移植自体ができなくなり、妊娠する確率は0%になります。分割胚のほうが妊娠率は低いとしても、胚移植ができれば、それに応じた妊娠率が期待できます。また、分割胚を2個移植すれば、そのぶん妊娠率は上昇します。

Q.凍結胚移植の移植周期については、どのようにお考えですか?

凍結胚移植を行う周期には、お薬でコントロールをして移植する「ホルモン補充周期」と、自然な排卵後に移植する「自然周期」があります。当院は自分のホルモンで子宮内膜を整えることができる自然周期の移植が70%を占めています。

一方、多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)などが原因で、自然周期での排卵がむずかしい方は、第二選択として、ホルモン補充周期で移植を行います。また、お仕事のご都合などで移植時期をコントロールされたい場合もホルモン補充周期を選択します。

自然周期での移植を第一選択としているのは、お薬を使って人工的に子宮内膜を操作するホルモン補充周期は、出産時に癒着胎盤などのリスクが起こる確率が高くなるためです。ただ、すべての人にこのようなリスクが起こるわけではありません。それぞれの方の状態やご希望に合わせてホルモン補充周期を選択する場合もあります。

Q.なかなか妊娠できずに悩んでいる方にメッセージをお願いします。

気持ちが落ち込むこともあると思います。できるだけストレスを貯めないようにして、ポジティブに、そして決して諦めないことです。「諦めること」と「治療のやめどき」は違います。自分が納得して治療を終わることは諦めることではありません。

治療を続けるうえで大切なことは、患者さんを想い、その人に合った治療をしてくれる医師や、自分が信頼できる施設にかかることです。たとえば、先ほどの移植方法でも全胚凍結や胚盤胞が有効な方もいます。しかし、胚盤胞にならない方に胚盤胞になるまで採卵を繰り返しても妊娠はできません。そういう方には、胚盤胞にこだわる医師よりも、「2日目の分割胚を移植してみましょう」と提案してくれる医師が必要ではないかと思います。

自分ではなかなか判断できないところもありますが、治療は人と人のかかわりですから、お互いの相性もあります。「合わないな」と思ったら転院を検討されるのも一つだと思います。

Q.「諦めないこと」が大事ですね。

私たちからみて妊娠がむずかしそうな方でも諦めないで治療を続けていると、パッと妊娠されることはたくさんあります。諦めないことは大事です。また、残念ながら妊娠につながらなくても、諦めずに治療を続けてきた方は、自分で「やめどき」もわかってくるような気がします。諦めたら後悔が残りますが、諦めなかったことで自然に出口が見え、納得して治療を終えることができるのだと思います。

当院は少し早いうちから出口のお話として、養子縁組や卵子提供、カップルだけの生活を考えるNext Stepと名付けた患者向けセミナーを行っています。不妊治療は「先の見えない治療」といわれますが、その先にどんな選択肢があるかを知らないから、先が見えなくなるのです。

セミナーでは当院での治療を経て養子縁組や卵子提供を受け、ハッピーに過ごされているカップルの紹介などをおこなっています。なぜこのようなお話をするかというと、たとえば、治療経験者が50歳になったときに「卵子提供のことを早く知っていたら私も受けたかった」という後悔をしてほしくないからです。知っていて選択しないことと、知らずに選択できなかったのでは、その後の人生が全く違うものになる可能性もあります。

さらに、私は産婦人科医の責任として、女性の生殖期だけでなく、その後に起こりうる更年期も含めてサポートできる「女性の生涯をトータルに考えた不妊治療」を行っていきたいと思っています。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。