【Q&A】受精卵から胚盤胞にならない~岩見 菜々子先生

体外受精や顕微授精をされている方の中には、受精卵が胚盤胞になかなか到達しない・・・、

そんな悩みを抱えている人、多いのではないでしょうか。

岩見先生に聞いてきました

神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
a915waさん (36歳) 去年は8月から体外受精を始めました。
採卵は2回しました。
1度目の採卵に至る排卵誘発法はクロミッドと1日おきの注射です。
育った卵の右が3つ、左に2つで18〜20mmほど育ったので全部採卵したようなのですが、医者いわく中身が入ってるのが1個でしたとの事。
その後顕微で受精し、順調に細胞分裂をしたのですが、3日目で停止したようです。
分裂すると、ゴミみたいなのが出て分裂の邪魔をするような感じと説明してもらいました。
2度目も同じ誘発法で、次は右の卵巣の3つを採卵しました。
※私は左の卵巣の奥まった所にあり、そのせいで成長しないのか左は卵巣の卵は育ちづらいです。先生に改善方法を聞いても、たまたまと言われるだけです。
3つ採卵した卵も中身が入ってるのが1個で、また3日で停止したそうです。
次は採卵の卵子の殻(みたいなもの?)を剥いてみてやってみます、との事でした。
そして今月クロミッドからメトロゾールに薬を変えて注射ありで誘発してみた所、今までより成長速度が早く、採卵当日に確認したら排卵していました。
リセットしてまたやろうとは思ってるのですが、そのクリニックが信じられなくなる事があり、妊娠する可能性はあるのか分からなくなったのでご相談しました。
薬を処方するの忘れたり、注射するのを忘れられたり、ストレスが良くないと言う割にストレスをかけてきます。
クリニックを変えた方がいいでしょうか?

36歳という年齢の割に、A M Hなど卵巣予備能が低い、または卵子の老化など卵子の質の低下があるかもしれないという印象を持ちました。

採卵してもほとんどが空胞とのことですが、36歳の場合で空胞率が高いとなると前述のように卵巣機能の低下などが背景因子としてあるのかもしれません。分割の停止についても卵子の質の低下など卵子側に要因があることが多いと言われています。

または排卵誘発法が低刺激のため合っていない、採卵時のトリガーに使用する薬剤が影響していることもあります。

細胞分裂の際のゴミのようなものというのは初期胚の評価に用いるフラグメントのことだと思います。フラグメントは写真を見ると胚の割球の周りに集積する小さな泡に見えるものです。フラグメントは多いほど胚の評価が低下しますので、フラグメントが多い胚の場合には途中で分割や成長が停止してしますことも多いです。

卵巣の位置によって卵子の発育に影響が出ることはありませんが、卵巣が子宮などに癒着していて、エコーで見えにくい、採卵の際に穿刺しにくいことはあります。ただ、採卵の時は静脈麻酔などをすることで緊張が取れ、腹部圧迫や子宮を貫通しての採卵など子宮の奥の卵巣でもできるだけ回収するように当院では努めています。

A M Hや排卵誘発開始時の月経3日以内のF S Hを測定し、また卵巣にその周期発育しそうな胞状卵胞がどの程度あるか超音波で確認することから卵巣の予備能を評価し、排卵誘発剤を検討するのが良いと思います。

卵巣の予備能が年齢相応にある場合には高刺激法としてH M G製剤などの連日注射により複数の卵胞を発育させることも可能かと思います。複数育った上で採卵を行うと、多少空胞が混在した場合でも獲得卵子は多くなりますので、分割し生き残る胚も増えることが予想されます。もし卵巣予備能が低い場合でもF S Hのコントロールや採卵決定のタイミングなどの見直しにより良い卵が撮れる可能性はあると思います。

また卵子の質の改善のためにアスタキサンチンやメラトニンなど高酸化力が期待できるサプリメントの摂取も補助療法として考慮しても良いと思います。

36歳という年齢のうち他の治療法を試してみることをお勧めいたします。

転院先が現在の治療しているところと違う機器や培養環境がある場合、胚の成長などが向上する可能性もあります。年齢がより若いうちに他の治療法を相談してみるのも一つです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。