流産を繰り返す原因について

流産を経験すると、「私の生活が不規則だったせいかな…」と、ご自身を責めてしまう妊婦さんも少なくありません。でも本当に妊婦さんの生活スタイルが流産の引き金になっているのでしょうか。そこで産婦人科医で、長年不育症の研究と治療に携わってきた竹下レディスクリニックの竹下俊行先生に流産を繰り返す原因と、その対応策について教えていただきました。

竹下俊行先生(竹下レディスクリニック院長) 1981年3月日本医科大学医学部卒業。1986年日本医科大学大学院医学研究科終了。米国への留学を経て1992年日本医科大学付属第一病院産婦人科医局長、2003年に同大学大学院女性生殖発達病態学分野大学院教授に就任。2021年より同大学名誉教授に。2021年に不育症専門のクリニックとして竹下レディスクリニック開院。流産を始め辛い経験をしたご夫婦をやさしく受け止め、寄り添う治療をしてくれると、遠方から通う患者さんも多い

流産が起こる原因にはどんなことがありますか。不規則な生活をしていると流産しますか。

流産の主な原因のひとつは、赤ちゃんの染色体異常に因るもの。不規則な生活との関係はまだわかっていません。

流産とは、妊娠22週より前に妊娠を継続できない状態になることを指しますが、ほとんどの流産は10週より前に起こる初期流産です。

流産は全妊娠の約15%程度で、その原因の多くは赤ちゃん側にあり染色体異常が多いといわれています。染色体異常は不規則な生活や仕事のストレスによって誘発されることはなく、受精した段階ですでに決まっています。ちなみに胎児の染色体異常の割合は、妊婦さんの年齢が高くなればなるほど増えていきます。

赤ちゃん側ではなく母体側の原因により流産に至ることはありますが、不規則な生活や夜勤のあるハードな仕事が原因になるかどうかはわかっていません。夜勤をする女性に流産が多いという報告がある一方、そのような生活スタイルと流産はまったく関係がないという報告もあり、よくわかっていないというのが現状です。しかし、仕事の負担が極端に大きければ、間接的に妊娠に悪影響を及ぼす可能性は十分にありますので、職場と相談して仕事量や環境などを調整してもらうとよいでしょう。

ストレスがかかると流産しやすいでしょうか。

ストレスが流産を誘発するかも今のところ不明です。ただ、ストレスを軽減すると流産率が下がるという報告があります。

ストレスが流産を誘発するというはっきりしたエビデンスはありません。しかし、妊娠初期にテンダー・ラビング・ケア(TLC)を行なうと、流産率が下がったといういくつかの研究結果が報告されています。TLCとは、文字通り優しく愛に満ちたケアで、妊娠中の不安や悩みを受け止め精神的な支持療法を行なうことをいいます。こうしたことから、妊娠中、特に妊娠初期ではストレスの原因になることを極力避け軽減することが大切です。

もし妊娠中、仕事でストレスを頻繁に感じているようならば職場に相談を。ただ、自分から申し出ること自体がストレスになってしまう場合もありますので、そのような場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード(厚生労働省のホームページからもダウンロードができる)」を主治医に書いてもらいましょう。いわばドクターストップをかけてもらうのです。そうすることで仕事内容について配慮してもらえるので、活用してみてください。

「流産が2回目になってしまいました。今後出産できる可能性はありますか?」

流産を2回くり返した場合は不育症です。専門家に相談し検査を。

2回流産したので「不育症」という定義に当てはまります。

不育症とは、妊娠はするが流産や死産をくり返し、元気な赤ちゃんを出産することができない状態をいいます。不育症と診断されても、適切な検査を行ない治療をすれば元気な赤ちゃんを生める可能性は十分にあります。不育症の診療には専門的な知識と技術が必要です。是非、不育症の専門家がいる医療機関で検査をしてもらうのがいいでしょう。

不育症の原因には具体的にどんなものがありますか。

不育症の原因は多岐にわたります。子宮形態異常、抗リン脂質抗体症候群、夫婦染色体異常が不育症の3大原因です。

1:子宮形態異常

子宮の形に異常があり、赤ちゃんを育てていくのが難しい状態をさします。3D超音波で子宮の形を確認することで異常かわかります。先天的な異常と後天的な異常があります。

2:抗リン脂質抗体症候群

抗リン脂質抗体という自己抗体ができることにより血液が固まりやすくなり、血栓症や流産・死産をくり返してしまう病気です。

3:夫婦染色体異常

ご夫婦のどちらかに染色体異常があると、流産や死産をくり返すことがあります。この場合の染色体異常は、転座といって遺伝子の総和にはまったく問題がないので健康には支障がないのですが、妊娠するときだけ問題が起こります。不育症カップルの5%ほどにこのタイプの異常がみつかります。

4:内分泌代謝異常

甲状腺によるホルモンの異常や糖尿病などの場合、流産を起こすことがあります。

5:血液凝固異常

妊娠をすると血液は固まりやすくなります。もともと血液が固まりやすい素因(血栓性素因)を持っているとさらに固まりやすくなり、胎盤などの血流の遅いところに血栓(血の塊)ができて赤ちゃんに必要な酸素や栄養が行かなくなります。その結果、流産や死産になってしまうことがあります。

6:赤ちゃんの染色体異常の反復

先にも述べたように、流産の多くは赤ちゃん(胎児)の染色体異常によって起こり、その割合は60〜80%に上ります。原因不明不育症の多くはこの胎児染色体異常の反復であるといわれています。

1は超音波などの画像診断で、2~6は血液検査で診断します。

検査で不育症の原因が分かった場合、どんな治療をすることになりますか。

原因に応じた治療、対処法を行ない、元気な赤ちゃんを出産できるようにしていきます

1.子宮形態異常に対する治療

明らかに流産の原因になっている子宮筋腫などは手術で切除します。先天的な子宮形態異常(子宮奇形)も手術療法が行なわれますが、個々の症例によって状況が異なるので、専門家の判断が必要です。

2.抗リン脂質抗体症候群、血液凝固異常

ここで問題となるのは血が固まりやすくなることです。こうした状態を是正するために血液をサラサラにする薬物療法を行ないます。アスピリン(内服)やヘパリン(注射)を行ないます。

3.夫婦染色体異常

染色体転座などの染色体異常がみつかった場合、染色体そのものを治療することはできません。遺伝カウンセリングを受けながらその後の妊娠にどう対処するか考えてゆきます。最近では、体外受精を行ない移植する前に受精卵の染色体を調べる着床前検査という方法も選択できるようになったので、ご夫婦で話し合うことが大切です。

4.内分泌代謝異常

内科の専門医と相談します。

5.赤ちゃんの染色体異常の反復

最近の日本産科婦人科学会の臨床研究で、前述の着床前検査(PGT-A)が流産率下げることがわかりました。ただ、着床前検査には体外受精が必要になるので、自然妊娠ができる人に行なうかどうかは慎重でなければなりません。

 

 

 

➅まとめ

流産すると自身を責める場合も多いのですが、「◯◯をしたのが悪かった」ということはまずありません。ストレスや生活サイクルと流産の関係性は明らかになっていませんが、妊娠した後も勤務体制がきつい、ストレスを感じながら仕事をしている場合は、職場に相談を。働く環境や時間を調整してもらってください。

 

2回以上流産をくり返す場合は不育症になります。不育症の原因にはさまざまなものがありますが、不育症専門の医療機関でしっかり原因を探り、原因にあわせた治療、対応をしていくことで赤ちゃんを出産できる可能性が高くなります。もし「もしかしたら私、不育症かも…」と悩んでいる場合は、不育に詳しい医師のいる医療機関に相談してみてくださいね。

 

 

 

 

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。