コロナが猛威を振るっている現在、ワクチンの影響が気になる所です。
女性へのメッセージは学会などから行われているようですが…男性は?
浅田先生に聞いてきました。
例えば、Instagramでは、摂取すると精子の数が減るとか見かけたり。
実際どうなのでしょうか?
現在、COVID-19ワクチン接種に対して“ワクチン接種はしない方が良い”というような情報がSNS上で飛び交っていますが、ほとんどが間違いです。
例えば、風疹ワクチンのような生ワクチンや不活化ワクチンと、今回のファイザー社やモデルナ社のCOVID-19ワクチンであるメッセンジャーRNAワクチンは、大きく異なり、メッセンジャーRNAワクチンは画期的なワクチンだと思います。
メッセンジャーRNAは、タンパク合成のためのDNAの鋳型として作られ、タンパク質を作る役割を担い、その後分解されるというように働きます。メッセンジャーRNAワクチンは、細胞の中で比較的早く分解されますので、ワクチンがいつまでも身体の中に残り、悪影響を及ぼすのではないか、と言われることは全くの間違いです。抗体はある程度の期間残りますが、メッセンジャーRNAが体内に残って身体に悪影響を及ぼすことはありません。
アメリカの生殖医学会では、COVID-19の感染が広がり始めた昨年の1月頃から “パンデミック時における患者管理及び臨床勧告”として、様々な勧告を出しています。私はそれをずっとフォローしてきましたが、2021年7月23日に出されたNo.16の勧告では「COVID-19ワクチン接種は、男性・女性の妊孕性や不妊治療の結果に影響を与えない」とはっきり言いきっています。その後の8月20日に出されたNo.17においては「医療従事者は妊娠中または妊娠を試みる患者とそのパートナーの両方にCOVID-19ワクチンの接種を勧めることが重要である」とワクチン接種を勧めることが強調された勧告が出されました。アメリカは早くからこのような勧告が出され、ワクチン接種も早くから行われていましたが、接種に対する反対派もいるため、2回のワクチン接種が終了した人は50.9%、1回の接種が終了した人は約60%と、接種する人の人数が伸び悩んでいるそうです。
COVID-19ワクチンのメカニズムから、身体に及ぼす影響を心配されるようなことはなく、男女を問わず、妊娠の時期も問わず、ワクチンを接種するべきだ、という見解です。一刻も早く、若い人たちにも接種していただきたいと思います。
ひとつ論文を紹介します。
Human Reproduction 2021年6月号に掲載された論文でCOVID-19により重症になった男性のその後について記載されたイタリアの論文(Hum Reprod 2021 June36(6): 1520–1529.)ですが、大変衝撃的な内容でした。
性的活動があり、COVID-19から回復した43名の男性が調査対象となっています。その内11名が、乏精子症(精子の数が少なくなる)、極少精子・無精子(極端に精子が少なくなる、あるいは全く無い)という結果で、なかでも8名が無精子症と報告されています。
無精子症の男性は、通常200~300人に1人と言われており、クラインフェルター症候群(男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる疾患の総称)でも500人に1人と言われています。この論文は昨年末くらいに受け付けられているので、調査対象の人数は少ないですが、約25%の人が無精子症・乏精子症という報告には本当に驚きました。
昔から日本でも、おたふく風邪や高熱が何日も続くと無精子症になると言われていますが、COVID-19は高率に精巣炎や睾丸炎を引き起こして、精巣の中にある精子の造成組織を破壊することが考えられます。
日本では、アメリカASRMからの勧告「COVID-19ワクチンを接種して不妊症にならない」が誤訳されて“不妊症になる”という情報が拡散されたとも言われていますが、ワクチン接種で不妊症になった、という症例は聞いたことがありません。
COVID-19ワクチン接種で不妊症になることはないですが、COVID-19の感染で不妊症になることはありえますので、ワクチン接種の有無で悩むよりもCOVID-19にいかに感染しないか、で悩んでいただきたいと思います。