巷にあふれる「◯◯したら妊娠できた」「◯◯はNG !」といった妊娠にまつわる噂や俗説。本当に信じて大丈夫? なかむらレディースクリニックの中村嘉宏先生に医師の立場から教えていただきました。
双子の親からは、双子が生まれやすい?
双子を妊娠する確率は100人中に1人
双子を妊娠する確率は、自然状態では、約1%です。双子の遺伝性の差は「人種内」にはありませんが、「人種間」では差があります。欧米での双子の確率は日本人の約2倍ですが、日本人だけで考えると双子の親から双子が生まれやすいということはありません。
なお、体外受精では双子の確率は約3%となっています。
約20年前は体外受精による多胎妊娠が社会問題になりました。当時は凍結技術や胚盤胞培養技術が確立していなかったため、受精卵を3個ほど移植していたからです。現在は、胚移植の数は原則1個です。妊娠が成立しにくい方や高齢の方に分割胚を移植する時も、2個までと決まっています。そのため、多胎妊娠は激減し、双胎の確率は3%程度に低下しています。
双子を妊娠すると、妊娠中や分娩の時の合併症のリスクが高くなります。その一つが早産で、双胎妊娠の約50%が早産になります。また、高血圧やたんぱく尿をともなう妊娠高血圧症候群を発症しやすく、ハイリスクの場合は入院や早期の帝王切開が必要になります。
なお、今日では、周産期医療技術や管理が進歩していますので、不妊治療を受ける方は周産期リスクを過剰に心配されなくてもいいでしょう。
流産後は妊娠しやすい?
流産を繰り返す人は、不育症検査や着床前診断を検討するのも一つです。
体外受精でも、自然妊娠でも、流産後に妊娠しやすくなることはないと思います。不適切な流産処置を受けたり、流産後の周期で絨毛から分泌されるhCG の値が高く持続している場合などは、妊娠率が低下することがあります。子宮内に絨毛の取り残しがなく、ホルモンの状態がリセットされていれば、流産後の周期でも妊娠は可能です。ただ、妊娠の確率は流産前と変わりません。
年齢とともに1回あたりの流産率は高くなります。一般的に2回続けて流産する確率は約4%です。2回続けて流産になった場合は偶然が重なった可能性も高く、不育症検査をするかどうかは迷うところです。
年齢が高い方や流産の原因が気になる方、体外受精で2回つづけて流産されている方は、早めに不育症検査を受けられてもいいと思います。
繰り返す流産は身体的、心理的につらいものです。体外受精をされている方は、次の採卵で着床前診断(PGT-A)を検討されるのもいいでしょう。PGT-Aで染色体数正常の胚盤胞を移植すると流産率が10% 程度に低下します。
オーガズムは妊娠に必要?
オーガズムにこだわりすぎずリラックスして妊活しましょう
少し赤面する内容ですね( 笑)。排卵期になると子宮内膜は自然に収縮します。超音波で排卵期の子宮内膜をみると、精子を送り込みやすくする「ぜん動運動」を確認することができます。そのため、オーガズムを感じても、感じなくても妊娠率は変わらないと思います。
オーガズムが関係するタイミング法はあくまでも治療の入り口です。人工授精や体外受精など、赤ちゃんを授かるための方法はたくさんあります。オーガズムなどにこだわりすぎず、リラックスして妊活を続けてください。
中村先生より
「排卵日以外にも性交渉の機会をもったほうがいいですか?」という質問をよく受けます。通院中は超音波と採血の検査で排卵日を正確に推定し、適切なタイミングをお伝えします。そのため、妊活をプレッシャーに感じられるご夫婦は、無理してまで性交渉をもつ必要はありません。タイミング法以外にも人工授精などの治療があるので、プレッシャーを感じる場合は気持ちを切り替えてもらうのもいいかもしれません。