基礎体温をつけると、どんなことがわかるのでしょうか。また、基礎体温の測り方や読みとり方は?基礎体温の基本知識について、HORACグランフロント大阪クリニックの院長、森本義晴先生に教えていただきました。

HORACグランフロント大阪クリニック 森本 義晴 先生 「IVF大阪クリニック」「IVFなんばクリニック」「HORAC グランフロント大阪クリニック」を運営。西洋医学に心 理療法、運動療法、栄養療法を組み合わせた統合医 療を実践し、卵子の質の改善を目的としたミトコンドリア 研究に長年携わる。2016年から自家ミトコンドリア移植法 「オーグメント療法」の臨床研究をスタート。世界体外受精学会のプレジデントを務めるなど、生殖医療のパイオニアとして世界を牽引し続けている。

基礎体温を測るときのポイント

 

体温には風邪のときなどに測る「表面体温」と、妊活の目安になる「基礎体温」があります。なかでも基礎体温は、呼吸など必要最低限の代謝活動をおこなっている睡眠中(入眠から約4時間後)の体温をいいます。基礎体温は体を動かすと上昇します。寝る前に枕もとなどに婦人体温計を用意し、目が覚めたら起き上がらずにすぐに舌の下に置いて測りましょう。

朝目覚めてすぐに測るのが理想ですが、夜勤などで夜眠れない方は2〜3時間昼寝などをした後に測定した数値を代用できます。ただ、夜一睡もしないまま朝測った数値は参考になりません。体の代謝活動にかかわる脳がきちんと睡眠をとった状態で測ることが大切です。

 

婦人体温計には実測式と予測式があります。またアプリ連動型でデータを自動的に記録できるものもあります。当院は、患者様が記録したデータをカルテに自動的に反映・記録できる独自の『まがたまアプリ』を使用しています。

 

基礎体温でわかることは?

 

女性は月経周期でホルモンの状態が変わり、基礎体温に影響します。ホルモンが正常に分泌していれば、体温は低温と高温の二層にわかれます。この体温変化によって月経周期や排卵日を予測できます。

 

基礎体温をつけるときは、生理日や性交日、ホルモン検査の結果などと一緒に記録しておくと、性交と排卵、ホルモンの関係などもわかります。さらに記録をつづけていくと自分の体のデータベースになります。治療をはじめるときや転院するときに、先生に体の状態を伝えるツールとしても役立ちます。

私たちの体は、約34兆個の各細胞にある体内時計やミトコンドリアによって支えられ、ストレスを感じるとこれらの動きが悪くなるといわれています。さらに内分泌系、神経系、免疫系などのバランスを崩すと卵子や精子の質にも影響します。基礎体温はこうした体の状態にも連動しています。とくに女性は生理周期のなかで、ネガティブ期やポジティブ期など、精神面の変動が起こりやすくなります。妊活中にかぎらず普段の生活でもこのような心身のリズムを知り、バランスを整えていくことも大切です。

 

基礎体温とのつき合い方

 

妊活中や妊娠中は、基礎体温の微妙な変化で「排卵したのでは?」「赤ちゃんが危ないのでは?」と一喜一憂される方もいらっしゃいます。たとえば、SNSなどでは「インプランテーションディップ(着床時期に一時的に起こる体温の低下)」という言葉がひとり歩きしていますが、これについての研究や医学的根拠はありません。基礎体温は体の中のホルモンの状態を「体温中枢」というフィルターを通じて解釈した値です。あくまでも自分の体のリズムを知る目安として、おおらかにつき合うのがいいでしょう。

 

また、基礎体温表が見本のようにきれいな二層になる方は100人に1人程度です。基礎体温は相対的(総体的)なもので、もともと体温が高い方や低い方など個人差があります。ご自分の基礎体温の高温層と低温層の中間値に平均線を入れてみて、曖昧でもゆるやかに二層になっていれば問題ありません。

基礎体温をつけたくないときは?

 

当院では『基礎体温ノート』の活用をおすすめし、患者さんと医師の交換日記という位置づけにしています。患者さんには基礎体温のほかにも、「今日は気分が落ち込んだ」「パートナーとケンカした」など、さまざまなことを書き込んでもらい、医師はそれを参考にしながら、卵胞の数や内膜の厚さ、注射の量など診察の結果を記入しています。

 

ただ、なかには基礎体温をつけることにストレスを感じる方もいらっしゃいます。通院されていれば、基礎体温に代わる高度な検査がたくさんあります。1日おきでも、2〜3カ月休んでもかまいません。

基礎体温をつけていてリズムの乱れを感じたら、思いきって治療や基礎体温の測定を1カ月程度お休みするのも効果的です。その間に、当院がおすすめしている『ミトコンウォーク』や、ヨガなどの軽い運動を心がけるだけで、次の周期に質の良い卵子が育つこともあります。ご自分なりのいい成果を記録してモチベーションを上げ、いい結果につなげていきましょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。