グレードの高い胚盤胞ができてもホルモン周期での移植の成果が出ない場合、着床の窓はどのように関係してくるのか、移植日をずらすことで着床の確率は変わるのか、内田クリニックの内田昭弘先生にお話を伺いました。
ドクターアドバイス
着床の窓が開いているとは受精卵が着床可能な時期ということ
はじめに、「着床の窓」について教えてください。
「着床の窓」とは、受精卵が子宮内膜に着床する条件が整っている時期のことで、英語で「インプランテーションウィンドウ」と呼ばれています。論文を発表した研究者がその言葉を使い、日本語では「着床の窓」と訳されたことが始まりです。
窓が開いていないと受精卵が入れない、開いている間でなければ胚移植をしても着床しないという考察からスタートしています。窓が開いている3日間は受精卵をいつ戻してもいいという考え方、窓が開いているのは1日だけという考え方などさまざまで、論文上では、「着床の窓は絶対にずれないということはない」、とあります。
子宮内膜の変化が早く進むことは少なく胚移植を1日遅らせるプランも
内田クリニックでは、移植のタイミングはどのような基準で決めているのですか?
ホルモン補充周期は、女性ホルモンであるエストロゲンと黄体ホルモンのプロゲステロン(坐薬)の2種類の薬で条件をつくります。みっぽさんの通う施設では、おそらく16日目から坐薬が加わり、6日目に移植をしているので22日目という計算になっているのではないでしょうか。
当院も、基本は22日目としていますが、坐薬がスタートしたその日から5、6日での移植と決めているので、前半が14日間で15日目から坐薬を加え、そこから5、6日目で胚移植をすると、20日目か21日目という伝え方になります。極端なことを言えば、前半が14日間でなくて20日間だったら、26日目もあり得ます。厳密には坐薬がスタートしないと胚移植の日は決まらないというのが正しいです。
みっぽさんは、生理周期が早いと着床の窓のタイミングも早いのではと考えているようですが、ホルモン剤の周期を使っていると基本的には本来の周期は関係ないので、早いということはないと思います。ERA検査といって、窓の状態を知る遺伝子検査もありますが、子宮内膜の変化が早く進んでしまう例はとても少ないので、当院ではその検査はしないで、1日遅らせるプランで治療しています。
難しいのは、子宮の条件を整えて戻したとしても、受精卵には1つとして同じものがなく、そこに問題があれば着床はできないということです。現在は着床前胚染色体異数性検査(以下PGTーA)により、染色体異常のない受精卵に限って子宮に戻すことで妊娠率が高くなるという報告が増えています。
しかし、それでも着床できないケースはあります。僕の考えとして、妊娠できるかどうかの条件を決めるのは8割から9割が受精卵で、残りの1割から2割は着床の窓のタイミングであったり、ホルモン剤の効果、子宮内膜の厚さ、細菌(フローラ)環境、免疫など子宮の条件が整っているかどうかですよ、と患者さんに話しています。
みっぽさんは最後の治療と決めているようです。その前にアドバイスをお願いします。
胚盤胞については、グレードだけではわからないこともあるので、PGTーA検査をしてみてはどうでしょうか。また、受精卵には、孵化しやすいようにレーザーで殻を開けてやるアシストハッチングを試みたいですね。子宮に対しては、あらかじめ受精卵を培養していた培養液を入れて着床の窓を開きやすくするシート法という治療があります。
ご主人と話し合い、もし納得できるところまで治療を続けるということになれば、現在の施設がほかにどのような提案をもっているかで、次の施設の門を叩いてみるのもいいと思います。41歳という年齢で胚盤胞が3つ凍結できるのはすごいです。年齢を含めた社会的理由はあるかもしれませんが、これを最後の治療にするのは、もったいないと思いますよ。
先生から
- 着床の窓がずれないことはなく、胚移植を1日後にすることで着床に成功する場合もあります