浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の勝川、名古屋駅前のほか、昨年5月には東京・品川駅前にもクリニックを開院。
かなっぺさん(38歳)不妊治療を始めよう、専門クリニックにかかったところ、大きな子宮筋腫が見つかり、子宮筋腫核摘 出手術をしました。現在、妊活再開待ちです。
基礎体温が全体的に低く、高くて36.5℃、低いと35.5℃まで下がります。術後はさらに下がっていま す。基礎体温を上げましょうと以前、クリニックで言われましたが、具体的にはどのような方法があり ますか。
自分なりに、ウォーキングや軽度の筋トレなどは行っています。
子宮筋腫があると不妊症になるという考えは間違いで、妊娠される人の中には大きな子宮筋腫がある人も多くいます。
筋腫は大きさだけではなく、子宮内のどこにあるかが、重要で着床する内膜の近く、あるいは内膜の中にあると着床の妨げになります。
ただ、30代後半から40代になれば3~4人に1人は筋腫を持っていて当り前ですので、多くの人に筋腫があると思って下さい。
筋腫が全くないことが普通で、特別な人だけに筋腫があるわけではありません。
また、“基礎体温が低いので、基礎体温を上げるにはどうしたらよいか”ということですが、基礎体温の温度は人それぞれなので、それを平均にあわせるために無理に何かをする必要はありません。ただ、体温が低い原因が甲状腺低下症等であれば、医学的対応をする必要があると思います。
基礎体温は、早朝の起きる前の安静時の口腔内体温のことですが、寝る時間や、寝る前の飲酒や食事、部屋の温度など些細なことで変化します。今の時期、コロナ感染症対策のため色々な場所で検温をされると思いますが、体温というのは変化して当り前です。そして子宮は骨盤の中心部にあり、卵が着床する部位というのは深部体温のため、身体の表面温度とは関係の無いところですので、基礎体温が高い、低いで妊娠率が変わることは考えられません。筋トレなどの運動をされることは健康のためには良いことですが、運動をしたから妊娠率が上がるというエビデンスはありません。
妊娠することと、健康な体で妊娠後に備えることは全く違う事だと思って下さい。
世界中で妊娠率が高いのは経済状況も悪い、栄養状態も悪い発展途上国です。
戦争地帯、難民キャンプなど食糧難で清潔な水もないような地域で、栄養失調の母親が栄養失調の子供を数多く出産している現状があります。その後の妊娠経過が上手くいくか、栄養が足りているかということと、栄養が足りていれば妊娠率が上がるかという話は全く別の話になります。そこのところを混同して悩まないで頂きたいと思います。
早く不妊治療を再開して妊娠して、子育てを楽しんで頂きたいと思います。