ウィズコロナ時代の新しい日常の中で、注目されている「オンライン診療」。患者さんと医師が直接会って診療を行う「対面診療」が必須の不妊治療では、どのような活用が期待できるでしょうか。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に教えていただきました。
コロナ禍で夫婦の絆が深まり一般不妊治療が増加!?
新型コロナウイルス感染症の影響で、妊活をされている方のなかには、感染リスクを心配されて、「通院を続けて大丈夫?」「しばらく休んだほうがいい?」といった判断に悩まれた方も多かったのではないでしょうか。
当院では以前から公式SNSやブログを通じて、通院されている方に診察時間のお知らせをしたり、さまざまな情報を発信しています。とくに現在のコロナ禍では、当院の感染予防対策をこまめにお伝えし、安心して来院いただけるよう努めています。国のマニュアルに沿って、院内のソーシャルディスタンスの確保や定期的なアルコール消毒と換気をはじめ、スタッフの検温、安全対策を徹底したランチタイムの様子などをリアルタイムに発信しつづけることで、4〜5月の外出自粛期間中も8割の方がふだんと変わらずに通院されました。
さらに、このような状況下で、ご主人と一緒に一般不妊治療を受けられる方がかなり増えました。多くのご夫婦がステイホームで一緒にいる時間が長くなり、絆が深まったのではないでしょうか。来年の春は自然妊娠で出産される方が増えることを期待しています。
希望する時間や場所で受けられるオンライン診療
また、感染予防対策の一つとして診察方法を見直し、外来の待ち時間を減らす工夫をしています。そのなかでぜひ利用していただきたいのが「オンライン診療(遠隔治療)」です。当院では4年前から導入していますが、厚生労働省の指針で、これまでは不妊治療の再診外来の患者さまが対象でした。今年の4月10日からは時限的ですが初診外来も認められるようになりました。
オンライン診療は、パソコンやスマホのインターネットを通じて、遠隔で治療を受けられるシステムです。患者さまは24時間いつでも診療予約ができますし、診察時間も9時半~、10時~、10時半~というように、ご都合のよい時間を30分単位(診察時間は10分)で選べます。外来であれば1時間以上お待ちいただくこともありますが、オンライン診療は、自宅はもちろん、職場や外出先など、ご都合のよい場所で予約時間通りに診察を受けることができます。
もちろん不妊治療は超音波検査で卵胞の状態を診断しますので、いずれは来院が必要になります。ただ、それ以外の薬の処方や治療方針の相談、セカンドオピニオン、不妊カウンセラーへの相談、さらにクリニックの雰囲気や担当医との“相性”を確認する最初のきっかけに、オンライン診療は便利だと思います。うまく活用していただければ、通院の負担も軽くなるのではないでしょうか。
精子の状態を気軽に相談男性外来もオンライン対応
最近は男性外来に通院する方も増えていますが、受診するのに抵抗がある方や、まずは精子の状態を知りたいという相談にも、生殖医療専門の泌尿器科医がオンラインで対応しています。たとえば、今はスマホで精子濃度や運動率を測定できる簡易キットもあります。その簡易キットの精液の画像を泌尿器科医とオンライン上で共有して診断することもできます。
新型コロナウイルス感染症の影響は、これからもしばらく続くことが予想されます。オンライン診療もうまく活用し、ウイルスに影響されることなく妊活を続けていただきたいと思います。ゆくゆくはオンライン上で、ご自宅の奥様と職場のご主人、医師の3者がそれぞれのいる場所で電子カルテを共有し、一歩踏み込んだ治療方針を話し合ったり、胚培養士がタイムラプスの動画を提示しながら、受精卵の説明を行うなど、ますます便利な使い方が広がっていくと思います。