知識を最大の武器にして、 納得のいく病院選びを
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ドクターアドバイス
データを正確に読み、 最善の病院を選びたい
日本産科婦人科学会(日産婦)が公開している “ 平均的な ” 妊娠率を知っていますか。年齢 ごとの妊娠率などを常識として把握しておき、 病院を選ぶ時にその施設が出しているデータと 照らし合わせてみることです。すると、たとえ ば一般的には何%なのに、かけ離れた数値が出て いれば「これはおかしいんじゃないか」と判断が つきます。
当院では開院当初から情報公開を重要視して います。それは患者さんが治療を選択するうえ で非常に大切なものだと考えているからです。 しかし、患者さんがホームページなどで簡単に 調べられるのがメリットである反面、データの見 方がわからずに本当の情報かどうかの判断がつ かないまま病院を選んでいることが多いのも事 実。日産婦と各施設の公式サイトのデータが違 うことも残念ながらあります。だからこそ、自 身が勉強すること、そして注意して見ることで、 気づけることがたくさんあるということを自覚 しましょう。
治療周期あたり4%が 胚移植あたりなら 30 %に!
その一つの目安として必ず確認していただきたい のが公開されているデータの分母と分子。妊娠率と 一言で言っても分母が異なれば比較できません。分 母は何か、分子は何か。それを提示しているかどう かが患者さんにとって一番重要な情報です。よく見 かけるのは、分母=胚移植あたりの妊娠率ですが、 胚移植ができる受精卵が得られれば、どの施設でも 平均して 30 %は妊娠できます。通常の調節刺激周期 法では、たいてい移植キャンセルはなく、移植周期 数は治療周期数と同じで分母が移植周期あたりで も治療周期あたりでも妊娠率は 30 %くらいですが、 採れる卵子の少ない自然周期法や低刺激周期法で は、胚移植あたりの妊娠率は 30 %くらいでも、分母 を治療周期あたりにすると妊娠率は4〜 7 %といわ れています。明らかに違いますよね。
通常、 10 〜 15 個の卵胞を育てることを目指して 排卵誘発します。たとえば卵胞が 10 個できると、 その中に卵子が入っている割合は8割で8個。受 精率は体外受精でも顕微授精でも7割なので受精 卵になれるのは8個中5個。そこから胚盤胞まで育つのは4割の1個か2個。 10 個採卵できれば1 個は戻せるという計算です。ドロップアウトせずに 胚盤胞まで育ったものを移植するのだから、胚移 植あたりの妊娠率が高いのは当然と理解できるで しょう。一つのクリニックの年間のデータとしては 同じものですが、分母が違えばこれだけの差が出 ることを、ほとんどの人は知りません。だからこ そ、「治療周期あたり」が重要であり、ご自身が通っ ている施設がそのデータを出していなければ問い 合わせ、明確な答えがなければ転院をおすすめし たいですね。
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いよいよ始まる着床前診断 患者さん自身も勉強を
日本では、不妊治療を行っている施設が世界的に 見ても多く、東京都内だけでも100を超えてい ます。その中からどこを選ぶのかはとても難しく、 テレビコマーシャルで見かける、街中で広告が目に 入るなど、視覚的に訴えかけてくる施設を選ぶ人 も多いでしょう。ほかの病気なら、日常的におす すめの病院を教え合ったりできますが、こと不妊 治療に関しては生きた情報交換ができるチャンス は滅多にありません。だから自分で探すしかなく、 間違った選び方をしてしまいがちです。生殖医療専 門医でなくても治療ができるというのも問題です が、患者さんがそれを知る由もありません。それ に関しては我々生殖医療専門医、生殖医療専門施 設の責任でもありますから、改善されるよう強く 訴えていきたいと考えています。
今年、いよいよ着床前診断が行われるようにな り、日本の生殖医療も新たな転換期を迎えるでしょう。遺伝子レベルで詳細なデータがわかるように なるということは、施設側は今まで以上に正確な データを公開し、患者さん側もそのデータを読み 解く力が必要になります。不妊治療は専門的な言 葉も多く難しいと思っている人も多いでしょうが、 知識をもつことは治療を受けるうえでとても大切 なこと。初歩的なことから段階を追って、積極的 に勉強していただきたいですね。