青葉レディースクリニック産婦人科医 小松一先生の妊娠前に始める母親教室
今から学んでおきたい妊娠と歯周病の関係について、 今回は青葉レディースクリニックの小松先生とあべな おこ歯科クリニックの安部先生が解説いたします。
ドクターアドバイス
歯周病とはどんな病気ですか?
安部先生 歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。お口の中には億単位の菌がいて、歯と歯肉の境目の清掃が行き届かないと、歯肉が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。さらに進行すると、歯周病菌が出す毒素でコラーゲンが破壊され、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて、最後は抜歯ということになってしまいます。
妊娠すると歯周病になりやすいと聞きました
小松先生 妊娠すると、女性ホルモンの増加に伴い、口内環境が大きく変わるといわれています。通常なら口の中を正常な環境に保つ役割を果たす唾液の分泌も減少することが多いため、トラブルが起きやすくなります。
安部先生 妊娠初期であれば、つわりで歯みがきができなかったり、食べ物の嗜好が変わることも、口内環境を悪くする要因になります。嘔吐により胃酸が口内に滞ることもよくありませんので、しっかりうがいをすることが大切です。また妊婦さんは、ホルモンバランスの乱れから、「妊娠性歯肉炎」という妊娠期特有の歯肉炎にかかりやすくなります。歯茎がぷくっと腫れる症状ですが、放置しておくと歯周病に移行してしまいます。口の中がネバネバする、口臭がする、歯肉がムズムズする、歯茎から出血するなどの症状を感じたら、早めに歯科医を受診してください。
歯周病になってしまったら胎児への影響はありますか?
小松先生 お口の中の環境が子宮とつながっているの? と思われるかもしれませんが、歯周病はお口の中があちこち傷だらけの状態だと思ってください。そうすると、健康な時には入ってこない細菌が、どんどん入っていきやすくなり、血流に乗って全身に回ってしまう。すると、子宮収縮が起きやすくなり、早産や低体重児のリスクを高めるのです。
近年、歯周病が全身疾患へ及ぼす影響が明らかになっています。糖尿病との関連も指摘されていることから、不妊とのかかわりも否定できません。妊娠を望んでいる方は日頃から口腔環境にも気をつけてほしいと思います。
妊娠中のケアを教えてください
安部先生 歯周病は治療可能なだけでなく、しっかりとケアをしていれば、十分予防できます。体調不良で歯磨きが十分にできない時は、
●キシリトール100%のタブレットを舐めたりやガムをかむ
●フッ素入りのうがい薬でうがいをする
●体調がいい時にフッ素濃度の高い歯磨き粉でしっかり歯磨きするなど、できる範囲で対策をしてみてください。
生まれてくるお子さんの乳歯は、実は妊娠4〜5カ月にはもうでき始めています。つわりがつらいかもしれませんが、この時期こそしっかりと栄養のバランスのとれた食生活が大切です。また、永久歯については、0歳からの授乳期間中につくられます。さらに、歯並びなどその後の口腔の発育については、捕食といって離乳食の与え方が重要になります。
小松先生 口内ケアは母子にとって、とても大切だと考えていますので、当院では「マグマグレッスン」という、歯科衛生士による産後の母子の歯の健康指導も行っています。生まれてくる赤ちゃんのために、歯を大事にすることで体の健康にもつながりますよ。
歯周病と妊娠について
妊娠すると、ホルモンバランスの変 化によってさまざまな体調の変化が起こります。その なかでも注意しておきたい一つに「歯周病」があり ます。妊娠中のお口の状態や日常の予防やケアなど について伺いました。
ご存じですか?妊婦歯科健診のこと
多くの自治体が、妊婦歯科健診の助成制度を設けています。(福岡 市の場合は無料で、母子健康手帳に助成券が綴じ込まれています) ぜひ利用して歯科健診を受けましょう。実施医療機関や助成額など 詳細は、各自治体にお問い合わせください。