青葉レディースクリニック産婦人科医小松一先生の「妊娠前に始める「母親教室」

小松先生の母親教室では、 皆さんが疑問に思っていたことを解説します。

小松 一 先生 高知県出身。九州大学医学部卒業。九州大学病院周産母子センターや北九州市立医療 センター、九州厚生年金病院などで研鑽を重ね、2007年に「青葉レディースクリニッ ク」を開業。高齢出産を多く手がけており、安心できる分娩をモットーにしている。

ドクターアドバイス

不安を減らして、 赤ちゃんをスムースに受け入れる準備を 。
出生前診断で異常が見つかっても、治療方法 をみんなで考えていきましょう。

出生前診断が増える背景について

30 年ほど前から、始まった超音波検査による出生前 診断は近年、超音波装置や新しい遺伝学的検査方法の開発によって、診断技術が目覚ましく向上し、胎児期や新生児期の正確な診断および治療が可能となってきました。一方で、致死的疾患や染色体異常が見つかった場合の対応については胎児の生命倫理的な観点から、現在も有識者の間で議論され続けています。

一般に、胎児の先天的な疾患は3~5%に認められ、小松先生の母親教室では、 皆さんが疑問に思っていたことを解説します。そのうち、染色体異常の割合は 25 %といわれています。 とりわけ母体の出産年齢が上がると常染色体の異常児が増えることが知られています。ダウン症児の場合、母体の出産年齢が 20 歳では1441分の1ですが、 35 歳で は338分の1、 40 歳では 84 分の1と高くなります。

しかし、「高年齢であっても、健康な赤ちゃんを安心して、産みたい」という希望はあるため、積極的に出生前診断を希望する患者、家族は増え続けています。

出生前診断の方法について

出生前診断には、超音波検査と血液や羊水を用いた染色体や遺伝子を調べる遺伝学的検査の2つがあります。前者はエコー検査とも呼ばれ、モニター画面に映る胎児の形態に異常がないか、発育の程度や羊水量などを診ます。後者は母体血中に存在する胎児由来の生化学物質(母体血清マーカーと言います)を測定して、胎児の染色体異常の確率を計算したり、胎盤の絨毛細胞、羊水中の細胞を採取して、染色体の数や構造に異常がないかを調べます。なお、染色体検査は診断確定検査ではありますが、完璧ではありません。染色体の微細な欠失や重複と呼ばれる異常については評価できないため、マイクロアレイという新しい方法が提唱されています。

羊水や胎盤絨毛細胞の採取は侵襲的検査と呼ばれ、お腹に針を刺すので若干、痛みを伴います。また、1~ 0.3 %程度の流産の可能性もあるため、慎重に検討す る必要があります。

近年、母体血中に胎児の細胞由来のDNA断片が多量に存在することが判明し、それらの遺伝情報を体系的かつ網羅的に分析して、無侵襲的に染色体検査をする方法NIPTが確立されました。しかしながら、染色体異常が見つかった場合に中絶術の安易な実施を避けるため、 35 歳以上の高齢妊婦や超音波検査で、染色体異常が強く疑われる妊婦のみ、認定施設で受けることができるという厳格な条件が定められています。

超音波検査の時期と 診断内容について

超音波検査は妊娠週数によって診断できる内容が異なります。妊娠8~ 10 週に分娩予定日を決め、妊娠 14 週までに胎児数、胎児の頭部や顔面、後頸部(首の後ろ)、脊椎、四肢に異常がないかを診ます。 20 週にな るとある程度、細かい形態異常の診断が可能となり、妊娠中期の 28 週以降は胎児のほとんどの臓器、頭部、 心臓、消化管などより詳しく観察することができます。

検査後のトータルケアについて

当院で確認した胎児病には胎児水腫や臍帯ヘルニア、水腎症や先天性水頭症、口唇裂、先天性心疾患など多くの疾患が含まれます。従来、これらの先天性心疾患や外科的疾患の多くは、出生後に治療計画を立てることが一般的でしたが、現在は正確に出生前診断することによって、新生児医や各専門医に相談し、早期に治療計画を立てることが可能となりました。また、家族はゆっくりと心の準備ができ、早い段階で周囲の環境を整えることができるため、スムースに赤ちゃんを受け入れることができます。

診断装置は飛躍的に進歩していますが、妊婦健診という限られた時間の中で、正確に診断するには高度な知識と技術が求められます。また、不安を抱く患者さんにはメンタルケアに配慮して、丁寧に説明する必要もあります。

出生前診断について

出生前診断とは胎児期に胎児の病 態をできるだけ正確に知る検査のことです。その病態 によって、胎児期に治療を開始することや生後すぐ治 療するための計画を立てることが可能となり、家族が 心の準備をする時間的余裕もできます。

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