Q 質のよい卵子の採取がうまくいかず 分割も進まず、今後が見えない
ドクターアドバイス
これまで 10 回採卵されており、卵子や、 胚の質の低下にお悩みです。
蔵本先生 まず低刺激とはいえ、頻回に刺激を与え続けると卵巣の反応は必ず低下し てきます。また、ゴナールエフⓇ150単位 の連続投与は欧米では低刺激にあたります。 通常は7~8個採れるかどうかという平均 値のなか、それで5個採卵できているという ことは豆子さんの卵巣の反応は悪くないと思います。決して悲観することはありません。しかし 4 日目で分割が止まるのはいい傾向ではありません。治療を続けて少し疲弊している卵巣のためにも、卵巣刺激に関しては少し休みをとられて採卵数を8個以上、可能なら 10 個程度採る方法を考えられてもい いのではないでしょうか。お休み期間の目安は1~2カ月ほどでよいかと思います。
採取した卵子には一定数の染色体異常のある卵子が含まれ、これらは着床しないか流産に終わります。採卵数が増えれば当然正常染色体の胚が採れる可能性が高くな ります。ゴナールエフⓇ225 単位またはミックス法といわれるもので、FSH +HMG で LH(黄体形成ホルモン)または hCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)を少し混ぜる方法なのですが、たとえばゴ ナールエフⓇ150 単位+ HMG 製剤 75 単位または 150 単位を 4 ~ 5 日間連日 注射をし、血中 E2(卵胞ホルモン)値や卵胞発育の状況に応じて注射量を変えていきます。こうすることでゴナールエフⓇ150 単位単独よりも、 1 回の刺激で多くの卵子が採取できると思います。また、顕微授精もされているようですが、体外受精で正常受精するのであれば豆子さんに顕微授精は必要ないと考えます。
現在の治療法では限界を感じておられ ますが、考えられる打開策は。
蔵本先生 もしアンタゴニスト法で進歩を感じないようならロング法を試してみるの もいいかもしれません。注射ではなく点鼻 で行うのですが多くの卵子を得られる可能 性がある採取法で、全胚凍結ができれば体 の負担も減るでしょう。 35 歳はまだ可能性 があります。 8 個以上、できれば 10 個以上 の卵子を採れるような治療法を模索してい きましょう。
また、使用する培養液、培養器についても施設側と検討したほうがいいかもしれません。何種類も準備している施設と、そうでない施設では可能性も大きく変わってきます。不安があるようでしたら、思い切って施設を変えるのもいいのではないでしょうか。また、細胞分裂が遅いようなら、ミトコンドリアのエネルギー代謝に必要な Lーカルニチンなどが含まれるサプリメントを使ってみてもいいかと思います。
また長年積み重なったストレスは活性酸素を増やし、妊娠にいい影響は与えません。まずは心も体も少し休んでリフレッシュし、なにか打ち込める趣味を楽しみながら、ご主人と改めて相談する時間を作ることも妊娠への近道なのかもしれませんよ。