ERAのこと教えて

着床率を上げるための子宮内膜検査 ERAのこと教えて!

体外受精の治療で受精卵を子宮に移植する時、子宮が着床に適切 な状態かを遺伝子発現レベルで調べるERA(エラ・子宮内膜着 床能検査)。

最新のテクノロジー検査をいち早く導入する、松本レ ディースクリニック副院長の松本玲央奈先生にお話を伺いました。

松本玲央奈 先生 聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学産婦人科学教室、長野県立 こども病院総合周産期センターなどを経て、東京大学大学院医学研 究科で着床外来に就きながら着床の基礎研究に従事。2018年より 現職。男性外来や漢方外来も併設し、オーダーメイドの治療を実践。 2015年不妊分野において権威あるヨーロッパ生殖医学会で着床に 関する論文でAward受賞。

ドクターアドバイス

ERAは積み上げてきた実績と高い解析力が 世界中で信頼されている検査です

患者さんの適切な移植日が 科学的にわかるERA

ERA(子宮内膜着床能検査)は、子宮内膜が受精卵を受け入れる状態かどうかを調べる遺伝子検査です。受け入れが整っている状態を“着床の窓が開いている”といい、通常移植はこの時期に行います。移植を繰り返しても着床しないケースは、実は遺伝子レベルで着床の窓と移植日にずれがある場合があります。これまでは解析する手段がありませんでしたが、ERAによって、移植予定日の患者さんの子宮内膜を採取するだけで、着床の窓と移植日のずれが科学的にわかるようになりました。たとえば「予定日は適切」「予定日より▲日早すぎる・遅すぎる」というようにです。しかも、 12 時間のずれまで的確な指示が出ます。これによって患者さんの適切な移植日が定まり、妊娠の可能性を高めることが期待できます。
  当院がERAを導入したのは2018 年の夏で、ちょうど1年経ちます。これまでに検査を受けられた患者さんは200人以上で、当院を卒院された患者さんから「ERAをやってよかった」という声が多数寄せられています。

移植に初めて臨む患者さんも ERAを希望するケースが増加

患者さんにERAをご提案するタイミングは、受精卵が凍結できた時です。検査を受けられるのは、他院で何度も移植に失敗された方や、移植する受精卵が極めて少ない方など、着床に難題がある方々です。検査を受けられた後は「もっと早くこの検査を知りたかった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

一方、初めて受精卵を移植する方もかなりの数で検査をご希望されます。大切な受精卵を無駄にしたくない、やれることはすべてやりたい、自然妊娠しないのは着床に問題があるからかもしれないなど、理由はいろいろです。ERAはもともと着床不全の方に向けた検査ですが、移植が初めての方もご存じなのは、当院が“着床外来”を専門に設けているからでしょう。

最新の検査と基礎研究を生かし 未解明の着床問題に立ち向かう

当院ではERAと同時に子宮鏡検査とEMMA/ALICE(通称エマ  アリス)を受けていただくことができます。これらの検査をする理由は、移植する子宮環境もよくして着床の可能性をより高めるためです。

子宮鏡検査では子宮内を観察し、ポリープや子宮腺筋症など、着床を妨げる病変を調べ、異常があれば直ちに治療します。EMMA/ALICEは子宮内膜に炎症を起こす菌があるかを調べる検査で、悪さをする菌がいれば結果レポートで推奨された抗生剤で治療します。

  着床分野は解明が難しい部分がまだ多 いのが実情です。未解明な部分に立ち向かうためには、たくさんの治療法を用意することが重要です。その手段として最新の遺伝子検査ERAや、EMMA/ALICEが役立っています。
子宮内膜着床能検査ERA(Endometrial Receptivity Analysis) は我々が独自に開発した 検査です。2009年に特許を取っていますが、昨年から名前も似ている検査が市場に複数出てきています。技術的にERAと同等の検査をほかでも開発できるのかどうかについて、お話ししたいと思います。

世の中の遺伝子検査の ほとんどはDNA検査

世の中の遺伝子検査にはDNA検査とRNA検査の 2 種類しか存在しません。

DNAとは私たちの体を構成するすべての細胞に存在し、このDNAの情報に基づいて体の細胞、器官、臓器がつくられているため、「生命の設計図」とも呼ばれています。ヒトのDNAはほとんど共通していますが、 0.1 %程度 に違いがみられ、それが個人の多様性を生み出しているといわれています。

両親から受け継いだ生涯変わることがない個人の遺伝子情報、つまり体質を調べるのがDNA検査です。DNA検査では習慣病のリスク、薬の副作用の出やすさ、運動、代謝能力などがわかります。これにより、将来かかる可能性のある病気を予防したり、個人の体質に合う効果的かつ適切な薬を選択したりすることができ、最近では美容分野において肌の特徴などをみて化粧水を推奨するサービスもあるようです。

臨床の応用としては、新型出生前診断や着床前スクリーニング、個別化医療のためのがん検査がよく知られています。これらのDNAを用いた検査は比較的に単純で検査原理が容易であるため、模倣するハードルが低く、新しい検査が出てもすぐに後発品が出てきます。検査会社として差別化できるのは、世界規模の多国間臨床試験による有効性の検証があるかどうか、また検査結果に推奨される処置がしっかり記載してあるかなどにあります。

ほとんどコピーできない RNA検査技術

RNAを用いた検査は基本的に遺伝子発現解析になります。RNAはDNAの情報をもとに体をつくったり、動かしたり、生理状態を維持するために作られ、皮膚の細胞や筋肉の細胞、神経細胞など、その場で働く細胞の役割や時間によって、遺伝子のRNA発現パターンが変わります。

特異的なパターンを使って、逆に体の状態を推測することもできます。このRNAの発現パターンを応用したものがERA検査です。 10 年前の開発当時はヒトの全遺伝子約 3 万個のうち、238個の遺伝子が子宮内膜の着床能にかかわっていることがわかったので、これらの遺伝子を用いて我々は独自に子宮内膜着床能の検査を開発しました。

200種類以上の遺伝子ともなれば、単純にパターンを見て推測できるものではなく、AIを用いたビッグデータを扱う概念が必要になります。多くの遺伝子の発現量をみて、主成分解析などの統計学的手法を用いて専用の解析アルゴリズムを開発し、多くの臨床検体を使ってトレーニングして精度を上げてきました。

RNA検査がDNA検査より難しいのは、検査そのものではなく解析です。RNA検査における後発品は解析のハードルを下げるために調べる遺伝子の数を減らし検査機器を簡易なものにすることでコスト削減を図ったりしていますが、そのリスクとして解析精度もかなり落ちます。これはRNA検査である以上、避けようがありません。

精度の高い検査技術を 提供したい我々の想い

ERA検査は日本で導入されてから 2 年経たずに200近くの施設で採用していただきました。多くの反復着床不全の患者様に貢献し、国内のみならず、アジア、または世界中でも話題になっております。不妊治療にかかわる遺伝子検査を提供している会社が、戦略的に着床の窓の検査を開発することは理解できますが、ERAほどの精度に短期間で追いつくことはできず、まして遺伝子の数を落とすことで精度自体も落としたものを提供することは、大事な胚をリスクにさらすことにならないか心配でなりません。

ERA検査は「着床の窓」を特定するために我々が独自に開発した検査であり、その精度や正確性も日々進化を続けています。正確で精度の高い「着床の窓」を特定するためにはERA検査をお受けください。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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