禁欲期間が長ければ長いほど精子の質はよくなる?

妊活の一歩はまず知ることから。妊娠・出産について、あなたはどのくらい知識がありますか? 〇×クイズで、妊娠の知識を高めましょう!

生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立 大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいとい う思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986年から体 外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。

禁欲期間が長ければ長いほど精子の質はよくなる?

禁欲期間があまり長いと精子の質は悪くなる

禁欲期間が長いほど精子の質がよくなる、ということはありません。精液所見でみる精子の質は、数や運動率、奇形率、まっすぐ進んでいく精子の数といったものが主で、禁欲期間が長いと動きが悪くなって、期間が長くなるほど死んでいきます。健康な人でしたら精子は1日三千万匹ぐらいつくられていますが、射精すると同じ数ぐらい死ぬので平衡に保たれているわけです。精子は睾丸でどんどんつくっては送られて、射精する前の場所まで押されて数珠繋ぎになっています。長く禁欲した状態で射精すると、先端に溜まっていた一番古い精子で、もうじきタンパク質やDNAがバラバラに分解されて再吸収されるものが出るわけですから質が悪い。パッと見の運動率は悪くなくても、しっかり元気に泳いでいる精子が少ないのです。

たとえば体外受精で2〜3週間溜めた精子を採取して持って来られると、卵子が10個あっても1個も受精しない、ということもあります。精液検査をする時は2〜3日禁欲してから、ということになっていますが、体外受精で使う場合は前日や当日に採取しても問題ありません。連続で射精すると数は少なくなりますが、体外受精には僅かな精子しか使われませんし、そのほうが元気な精子が出てきます。

睾丸は体温より2度くらい低いことで精子をつくる能力を発揮できるので、こたつに長時間入るなど、睾丸を温めすぎないことも大切です。男性ホルモン系の成分が入った育毛剤の使用や過度の飲酒なども、控えるほうがいいですね。

精子の状態をよくするために

体外受精で排卵誘発剤を使用しても閉経は早まらない?

AMHの状況にもよりますが、体外受精の排卵誘発剤使用で閉経がむやみに早まることはない。

難しい問題ですけど、排卵誘発剤が原始卵胞の数まで減らすことはないので、基本的にはむやみに閉経が早まることはないと思います。原始卵胞は、寝ている状態から120日ぐらいかけてジワジワジワと、FSHに反応できるレベルの胞状卵胞(少し腔ができた状態の卵胞)に育ってきます。胞状卵胞になってから先はFSHの影響を受けて卵胞が育つので、注射をたくさん打てばそこら辺の卵胞はどんどんなくなりますけど、その前の状態の原始卵胞は関係ないので排卵誘発剤が原始卵胞を減らすことはありません。

もともと閉経の時期というのは、人によって早かったり遅かったり、すごくバラつきがあるんです。55歳で生理がある人もいますけど、日本の定義では43歳以降の閉経なら別に異常ではない。それぐらい差があるので、もともと早く閉経するタイプの人が体外受精をやったりすれば、そのせいで閉経の時期が早くなったと思われるかもしれませんが、その人のAMHが低ければ、治療をしようがしまいが早く生理が止まってしまうわけです。逆にAMHが高ければ、体外受精をしていても平均閉経期の50歳ちょっとまでは生理があるでしょうから、排卵誘発剤を使ったから閉経がむやみに早くなるということはないわけです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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