Q 体外受精に挑戦したいけど、 内膜症があると着床しづらい?

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所講 師、1989 年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経て、 1992 年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊治療に取り 組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は8,900件を超える。

ドクターアドバイス

子宮内膜症だと自然妊娠は難しいものの、着床率が低くなることはありません。
●子宮内膜症に最も効果がある治療は妊娠すること。早々に体外受精に挑戦を。
みきさん(27歳)からの相談 Q.2017年治療開始しタイミング4回→陽性からの胞状奇 胎。経過観察で6カ月間お休みし、今年1月から治療を 再開してタイミング2回、AIH2回目に黄体化未破裂卵 胞のためリセットを経て今に至ります。流産後、以前は二 相に分かれていた基礎体温もガタガタに。子宮や卵巣に は問題ないと言われましたが、排便痛・性交痛があるこ とからダグラス窩の内膜症だと言われており、最近は症 状がひどくなってきていることや基礎体温の感じなどから 内膜症も悪化しているのかなと思っています。深部の内 膜症は腹腔鏡手術が難しいようなので、これ以上悪化す る前に体外受精に挑戦してみたいのですが、着床しにく いなどハンデや問題があるのか気になっています。

ダグラス窩の子宮内膜症というのはどのよ うな病気ですか?

また、内膜症があると 着床率は下がりますか?
宇津宮先生 ダグラス窩とは子宮と直腸の間のくぼみ部分を指します。みきさんがおっしゃる通り、お腹の深部であるダグラス窩にできた内膜症を腹腔鏡手術で除去するというのは、腸に傷をつける可能性が高く、とても難しいので実施する施設はあまりないと思われます。また、みきさんの内膜症の症状についてですが、以前よりも排便痛や性交痛がひどくなっているようなので、絶対とはいえませんが、悪化している可能性はあるでしょう。

  子宮内膜症と着床率の因果関係は、実際の ところはありません。妊娠できない主たる原因が見当たらない原因不明不妊の患者さんが腹腔鏡検査をすると 57 %に内膜症が見 られます。よって内膜症が不妊の一因になっているというのは確かでしょう。しかし、内膜症だと診断されても、体外受精を行えばほとんどの場合で妊娠します。「内膜症=着床率が低い」とはいえません。

みきさん自身もチャレンジしたいと思っているようですし、ぜひ早めに体外受精を希望していることを主治医に相談してください。年齢的にもまだ 27 歳ということです から、質のよい卵子がたくさん採れる可能性も高いはずです。たとえ1回で結果が出なくても、諦めずに何回か試していただきたいですし、私がみきさんの主治医なら、そうご提案するでしょう。

基礎体温がガタガタになった理由として、 どのようなことが考えられますか?

宇津宮先生 一般的に排卵日は基礎体温が急に下がった日や高温期に入った日をいいます。しかし、基礎体温で排卵の兆候が現れているのに、実は排卵できていない可能性があり、それが黄体化未破裂卵胞(LUF)です。みきさんは人工授精2回目に黄体化未破裂卵胞がありましたよね。排卵を促す黄体化ホルモンの分泌が低く、高温期が短くなった。基礎体温がいつもと違って不調な月があったとしても、その理由が理解できれば、特に心配することはないと思っていただけるのではないでしょうか。

体外受精をする前に子宮内膜症の治療をす る必要はありますか?

宇津宮先生 当院でも初診の患者さんを対象にした新患教室などでよく話をしますが、治療の一番の目標は不妊を解決する、妊娠する、ということであり、子宮内膜症を治すことではないですよね。それをはっきりと自覚できれば自ずと優先順位が決まり、内膜症うんぬんについての心配や不安は解消されるはずです。内膜症があれば自然妊娠しづらいかもしれませんが、体外受精なら高い確率で妊娠します。しかも、妊娠すれば内膜症はほとんどが治るか症状が軽減されるのですから、体外受精の選択が最善でしょう。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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