中村先生に聞きました!妊娠にまつわるウワサの真相
巷にあふれる「◯◯したら妊娠できた」「◯◯は NG !」といった妊娠 にまつわる噂や俗説。本当に信じて大丈夫? なかむらレディースク リニックの中村嘉宏先生に医師の立場から教えていただきました。
中村先生よりアドバイス
ネット上には妊娠にまつわる多くの情報があふれていますが、なかには医師の立場からみて間違った情報が見受けられることも。妊活や妊娠中の不安は通われて いるクリニックの医師やスタッフに直接相談されるのが一番です。ネットで情報収 集する場合は、日本生殖医学会、日本産科婦人科学会などの信頼できるサイト での情報収集をおすすめします。学会監修の健康手帳「Human +」や無料ア プリ「Baby プラス」なども参考になります。
冷え性だと妊娠しにくい?
子宮や卵巣を含む体内の中心部は、筋肉や皮下脂肪に守られて外的・内的な環境の影響を受けにくく、恒常的に ℃前後に保たれています。そのため、手足が冷える、下半身が冷えるといった体感温度と子宮内部の温度はまったく異なるものです。冷え性はあくまでも主観的な感覚によるところが大きく、実際に冷えの自覚症状があっても、それが直接的な原因で子宮への血流が低下したり、妊娠しにくくなることはないと思います。
それでも冷えが気になる方は、冷え性に効果があるとされる当帰芍薬散や血行を改善するビタミンEなどのサプリメントを試されてみるといいと思います。
なお、子宮への血流の問題ですが、子宮奇形(形態異常)がある場合は子宮の血流が悪くなり、着床に影響することがあります。なかでも中隔子宮は着床不全や流産のリスクが高いとされ、手術治療の対象になります。当院では高性能の3 超音波検査で子宮内腔の形態を簡単に検査できます。その結果、手術が必要な場合では、子宮鏡下手術(レゼクトスコープ)という体への負担が少ない方法で治療し妊娠をめざしていただけます。
ホルモン剤を飲むと太りやすい?
黄体ホルモン剤による可能性もありま すが、食事と運動で体重管理すること も大切です。
黄体ホルモンは受精卵の着床や妊娠の継続に欠かせないホルモ ンです。多くの施設では、体外受精や人工授精後に着床を助ける 目的で黄体ホルモン剤が処方されています。しかし、黄体ホルモ ン剤を使用すると人によってはむくみや便秘、眠気などの副作用 が現れることがあります。
体重が増える理由として2つの見方があります。まず、黄体ホ ルモン剤には体内に水を溜め込む保水作用があります。そのため 体にむくみが生じて、体重増加につながっているのかもしれませ ん。もう一つは、食欲を刺激する作用の影響です。治療期間中に 食べる量が増えていないかチェックしてみるといいと思います。
おもに体重の増加は日常の摂 取カロリーと運動の有無が大き く関係しています。太りすぎも 痩せすぎも母胎と赤ちゃんのリ スクになります。体格指数(BMI) などを参考に妊娠に最適な体型 をめざし、栄養バランスの見直 しや軽い運動を心がけることも 大切です。
妊娠初期に自転車に乗ると流産のリスクになるって本当?
妊娠超初期はいつも通りの生活で OK。むしろ自転車は妊娠中期から注意。
おそらく着床期や妊娠初期についてのご質問だと思いますが、 近所にお買いものに行かれる程度でしたら心配ありません。20 年ほど前は、胚移植後1日間は安静にするという考え方がありま したが、胚移植後の安静の効果については否定的な報告が多く、 最近は移植後すぐに帰宅して、いつも通りに生活していただくと いう考え方の施設がほとんどです。
着床については子宮に移植した受精卵がコロコロと転がり落ち るイメージをおもちの方もいらっしゃるようです。子宮の大きさ を総合体育館にたとえると、受精卵はりんご1個程度の大きさで す。受精卵は子宮内膜の表面にある微細な凹凸のひだにもぐり込 むので、すぐに動いても転がり落ちることはありません。
また、子宮壁は分娩の時に赤ちゃんを押し出すくらいに強い、 筋肉の塊です。自転車をこぐ時の腹圧程度では子宮の中に圧が及 ぶということもありません。
結論として自転車をこぐことが、着床や妊娠初期の赤ちゃんに影響することはほとんどないと 思います。むしろ注意したいの は妊娠中期以降です。お腹が大 きくなると体型のバランスが変 化して自転車で転倒しやすくな り、お腹を打ったりするリスク があるからです。同じ理由で、 この時期は高いヒールの靴など も控えることをおすすめします。