松本玲央奈先生のオンライン質問会

男性の体づくりか、持病を抱えながらの妊活ポイントな 、幅広い質問が寄せられた松本先生の質問。質問者の 心情を気遣いながらも明確にお答えいただ、実りのある 会。途中チャットによる質問も続々寄せら、その一つ ひとつに丁寧にお答えいただきました。

 

ス 松本 玲央奈 先生 聖マリアンナ医科大学卒業。東京大学大学院修了。2015年にはヨーロッパ生 殖医学会において着床に関する研究で、最も権威のあるAwardなど国内外で多 数受賞。2020年松本レディース リプロダクションオフィス院長就任。「患者さん 一人ひとりにご納得いただける診断や治療を提供すること」が当院のモットー。

ドクターアドバイス

不妊治療はお一人おひとりの お考えやペースに合わせて 進めていくもの

ステップアップの  タイミングについて

ヒューナーテスト不良(精子0)の場合、人工授精にすぐステップアップするのでしょうか。

司会●ヒューナーテスト不良で精子が0、というのはどのような状態なのでしょうか。

松本先生●この時点では  つの状況が考えられます。一つは子宮の入口で粘液が精子を殺してしまうということ。そうすると当然、子宮の中に精子が行けませんから、受精する場所にもたどり着けず、妊娠できないということになります。もう一つは、タイミングが悪くて検査時にはすでに精子が通り過ぎてしまっているというケース。

さらに、もともと精子が少ない乏精子症だったり、精子がまったくいない無精子症だという場合も考えられます。

当院ではヒューナーテストの代わりに抗精子抗体の検査を実施しています。これは採血をして調べる女性側の検査なのですが、値が高いと精子を殺してしまう抗体をもっている可能性があるので、ステップアップの判断基準の一つとなっています。

司会●ではステップアップを考えたほうがいいのですか。

松本先生●ステップアップのタイミングというのはどなたにとっても大事な問題で、迷ってしまいますよね。これは一つの検査の結果というより、そこに至るまでの経過やご年齢、ステップアップに対するご自身の気持ちなど、いろいろなものを組み合わせて考えていくべきことなのかなと思います。お一人おひとりのお考えやペースに合わせて検討していくのは、不妊治療すべてにおいて当てはまることなのではないでしょうか。

男性が気をつけることと 男性ができる体づくり

 

ボクサーパンツよりトランクス、禁煙、摂取したほうが良い栄養 素やサプリなど、何に対してどれくらい効果があるのでしょうか。

司会●精子の状態を悪化させてしまう生活習慣について教 えてください。

松本先生●精子の製造場所である精巣(睾丸)は、温度に 影響されやすい器官なんですね。あまり温めすぎると精子 が死んでしまうので、タイトな下着はおすすめしません。 ひざの上でノートパソコンを操作するのも良くない。サウ ナも全面禁止としているクリニックもあります。温めるの はNG、逆に冷えすぎるのもダメということで、精液検査 は春頃に一番結果が良いという傾向があります。

喫煙に関しては絶対NG。精子の運動率などさまざまな ことに対して悪影響があるといわれているので、赤ちゃん を望んでいらっしゃるのなら禁煙は必須です。

司会●逆におすすめのものはありますか。

松本先生●サプリメントなら、細胞のエネルギー産生を促 すコエンザイムQ 10 や血流を改善するビタミンEなどが おすすめです。また、精子改善に関して漢方で結果が出て いるケースもありますが、漢方薬は薬剤なので自分に合っ ているものを摂ることが大切です。自己判断せず、漢方専 門のドクターなどに相談して適切なものを摂るようにして ください。

サプリや漢方に関しては、精液検査の結果が問題ないよ うでしたら特に気にしすぎないでもよいかもしれません。

ネフローゼ症候群で治療中。 妊娠は可能ですか?

 

寛解状態だったネフローゼ症候群が今年の5月に再発して入院。 3年間タイミング法で不妊治療を続けてきましたが、それもお休み に。こんな状態でも妊娠の可能性はある?

司会●ネフローゼ症候群とはどのような病気なのですか。

松本先生●本来人間の体には、重要な栄養であるたんぱ く質が体の外に漏れ出ていかないよう腎臓が働いていま す。しかし何かしらの原因でこの機能が壊れて、たんぱ く質が尿中に漏れ出てしまう状態をネフローゼ症候群と いいます。腎臓の病気ではありますが、もともとの原因 は全身の病気である可能性があります。この方はかなり 長い間ステロイド剤などで治療を頑張ってこられて、精 神的にも大変な思いをされているようですね。

司会●現在 31 歳で妊活にも臨んでいるようですが、妊娠 できる可能性はあるのでしょうか。

松本先生●早く妊娠したいということに目を向けがちだ と思いますが、この病気は全身に負担がかかってくるも の。妊娠が叶ったとしても、さらに体への負担が増して 病気に対してのコントロールがきかなくなり、体調が急 激に悪化してしまわないか心配です。

妊娠できる可能性はあるかもしれませんが、安全な時 期を見極めて計画を。内科の先生から「今、病状も検査 数値も落ち着いているので、妊活をしても大丈夫」とい う妊娠許可をいただいたうえで、持病の治療、不妊治療、 周産期医療まで連携してできる大学病院や総合病院で診 てもらうのが最善の形だと思います。

 

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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