Q 生理がなく、精神科の薬も 服用中。妊娠できますか?
伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部卒業、同大学院修了。順天堂大学医学部産婦 人科学教室講師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、1999 年あいウイメンズクリニック開院。日本生殖医学会生殖医療専門医。
目次
ドクターアドバイス
●まずは不妊に関する基本的な検査を受けて原因の究明を。
●薬の変更などをすれば、精神科と不妊の治療を両立することは可能です。
ゆうやんさん(34歳)からの相談 Q.生理周期が今日で65日にもなりますが、いっこうに生理が くる気配がありません。もうこのまま生理がこないのではな いかと不安です。結婚して妊活もしていますが、生理が来 ないので意味があるのか疑問です。精神科にも通っていて、 今は妊婦服用不可能な予防薬を服用しています。「妊娠した 時点で薬を変えたり、抜いたらいい」と医師からはいわれ ていますが、妊娠してそのまま服用し続けると奇形児や障 害児が生まれるリスクのある予防薬も。ちなみに薬はリーマ スⓇとデパケンⓇ、ロナセン Ⓡ、アキネトン Ⓡを服用しています。 近くの産婦人科へ行って相談したいのですが、夫は土曜日 も仕事のため、一緒に行くことはできません。私一人でも 不妊治療を進めることはできますか?
2カ月以上生理がきていないということ ですが。
伊藤先生 結婚歴3カ月で、まだ病院で不妊治療は受けていないようですね。生理がきていないということは排卵もないと思われるので、おっしゃるようにこのままの状態で自己タイミングをとっても妊娠は難しいかもしれません。突然なのか、それともたびたび不順になっているのか。もしくは極端なダイエットをしたり、過度なストレスがかかっているなど、もう少し詳しく背景がわからないと原因を特定することは難しいかと思います。
現在、精神科の薬も服用しているようです が、これが生理や排卵に影響を及ぼしている ことは考えられますか。
伊藤先生 精神科で処方される薬の中にはプロラクチンの分泌が増加する薬もあります。プロラクチンは乳汁分泌ホルモンともいわれているもので、増加すると排卵障害や黄体機能不全の原因となってしまうことがありま す。長期間飲み続けると生理が止まることも。
現在、ゆうやんさんが服用しているロナセ ンⓇという薬もプロラクチン値を上げてしまう作用があるようですが、ほかの薬と比べてその程度は軽いようです。妊娠する可能性がある年齢の方だったら、処方前にそのような説明は受けると思いますね。
たくさん精神科の薬を飲んでいらっしゃい ますが、それらの薬が生理をこなくしているという可能性は低いように思われます。
今後、どうしたらいいのでしょうか。
伊藤先生 お子さんを望まれているのなら、すぐに産婦人科、もしくは不妊治療専門施 設を受診することをおすすめします。ご主人は仕事で一緒に行けないということですが、それならまずお一人で行かれてもいいでしょう。
採血によるホルモン検査や卵巣や子宮の検査など、不妊に関する基本的な検査を受けて、原因部位を特定します。
視床下部性の排卵障害であれば排卵誘発 剤を使えば排卵させることができますし、プロラクチンの値が高ければ薬で下げることもできます。原因を究明し、排卵が起きる状態をつくっていくことが妊娠への第一歩でしょう。
精神科の病気と不妊、併行して治療してい くことは可能ですか。
伊藤先生 当院でも2つの治療を両立している患者さんはいらっしゃいます。妊活を始めるからといって、精神科の薬をすぐに止めることは難しいでしょう。ただ、ゆうやんさんも精神科の先生から説明を受けているようですが、現在服用している薬の中には妊娠中は禁忌のものも含まれています。
当院では精神科の薬を飲んでいる方は治療前に必ず申告していただき、妊娠中は止めたほうがいいものがあれば精神科の先生と 相談して、ほかの薬に変えてもらうようにしています。すぐに薬を切り替えることは難しいと思うので、余裕をもってスケジュールを立てていくことが大事だと思いますね。