シート法と採卵を 同周期で行うのは 可能でしょうか?
限られた診察時間の中では、何だか慌ただしく て治療についての疑問を解消できないまま診察 を終えてしまうということはありませんか。
採 卵と移植をいつ行うか、疑問を感じながらも聞 きそびれてしまったみーさんの質問を、田村秀 子婦人科医院の田中紀子先生に伺いました。
①シート法が採用されたのは、 着床環境を整えるという目的が
②自分の卵巣予備能や採卵の状況を ふまえて、率直に医師に相談を
③採卵後の子宮の環境は、 着床に適さない場合も
最近では凍結融解胚の移植が多く なっています。全胚凍結といって、良 好胚をすべて凍結し、その周期では移 植せず、別の周期に環境を整えて胚を 戻すという考え方です。採卵をした周 期は、ホルモンの環境としては通常よ り過剰になっている場合や、採卵の準 備に使用した薬剤の影響でホルモンの 環境が着床に適さない可能性もありま す。実際に着床率もよくないことか ら、最近では全胚凍結の考え方が主流 になってきています。
このように採卵後は子宮内膜の条 件がベストとはいえないので、そこ は無理に胚移植を急がず、もし採卵 を優先したい場合には、別の周期に ゆっくり環境を整えて凍結胚を戻す のがよいと思います。特にシート法 を採用するということは、先生に移 植の環境を整えようというお考えが あってのことではないでしょうか。 シート法に使う凍結した培養液も、 採卵周期の胚培養の時から大切に保 存してきたものなので、条件があま りよくない時に胚移植するのはおす すめできません。
④治療の進め方に疑問が あれば必ず聞いてみて
きっと病院ではひと通りの説明 をされているけど、話がサーッと 流れていくので、みーさんには内 容があまり残っていなかったので はないでしょうか。これまでの治 療の経過や体外受精の適応なども、 おそらく途中で説明を受けている と思いますよ。
やっぱり卵巣機能のことなど、 ご自分の体の状態をある程度知っ ておいた方がいいです。今一度ご 自分の治療を振り返り、どこに問 題があるのか、なぜ体外受精に至っ たのか、体外受精をして現段階で 何がわかったのかを、把握できれ ばいいですね。
治療の節目などに、先生が今後 の方針を話されるときがあると思 います。みーさんのように胚移植 の方向で先生が話をされているの に、「採卵をやったらダメなのか な…」とモヤモヤしていれば、治 療は中途半端になってしまいます。 そこはあえて話を止めてでも、先 生に質問して、そのモヤモヤを払 拭することが大切です。
モヤモヤやストレスを 解消し、気持ちを楽に
「患者さんの表情や気持ちの変化 など、普段の診察からコミュニケーションをとり、その方の状況を把握することはとても大事」と語る田中先生。診察はほぼ決まった医師で、信頼関係が築けている病院ならそれは可能ですが、複数の医師にみてもらう病院ではなかなか気持ちが伝わりにくいことも。
「それでも治療の節目に、『今はどういう状況ですか』と聞いて、疑問は解決したほうがよいし、話しづらければメモにして先生に渡してもよいですね」(田中先生)
医師のほかにも患者さんをサポートするスタッフが充実している病院も多く「これまでの経過について相談したいなら、看護師やコーディネーターにお話ししてみては。胚培養士との時間を設けているところもあります。自分の疑問や不安なども相談できますよ」(田中先生)。何よりも患者自身が納得し、理解して治療を進めることが大事です。
「ちょっと治療がつらいなあ、という時も、その気持ちを伝えてほしいですね。そんな患者さんの気持ちに寄り添いながら、ストレスをため込まないで治療に参加してもらえるよう応援していきたいと思っています」(田中先生)