流産とPCOSの関係は?

Q 流産は多囊胞性卵巣症候群による 卵子の質の低下が関係する?

内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、 1987年、島根県の体外受精による初の赤ちゃん誕生に携わる。 1997 年に内田クリニック開業。生殖医療中心の婦人科、奥様が 副院長を務める内科、大阪より月1回来院の荒木先生による心理カ ウンセリングをもって現在のクリニックの完成形としている。
モモさん(34歳)からの相談 Q.32歳の時にフォリスチムⓇを使用し、ロング法で採卵しま した。25個中9個の受精卵が胚盤胞になり、計6個の 胚盤胞を4回移植しましたが、すべて陰性の結果でした。 そして、33歳の時フェリングRを使用し、再度ロング法 で採卵し、20個中13個の受精卵が胚盤胞になりました。 2回移植を行い妊娠しましたが、1度目は8週で稽留流産、 2度目は5週で不全流産となってしまいました。陰性や流 産の結果が続いたのは、PCOSによる卵子の質の低下が 関係しているのでしょうか? 2度目の採卵では妊娠はでき ていますが、流産を繰り返しており、この時の受精卵で再 び妊娠し、出産できるのかとても不安です。

モモさんは多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) だから、卵子の質が悪いと思っています。

内田先生  PCOSの患者さんは、たくさんの卵子が育つというメリットがあります。ただ、たくさん育つなかに、妊娠につながるよい卵子とそうでない卵子が混じっていることは間違いありません。PCOSの患者さんは、質の悪い卵子も育つということを、ある程度は頭に置いておかなければと思います。

流産したのは、どのような卵子だったので しょうか?

内田先生 質の低下した卵子であれば、受精卵になって発育しても妊娠はするものの流産することは起こり得ます。しかし、胚盤胞まで発育したということであれば、一応の条件をクリアした受精卵ということなので、どちらかといえばいい卵子だったと考えられます。モモさんの 34 歳という年齢なら、当院で は2組に1組が妊娠しています。しかし、流産が 0 %ではありません。胚移植をする受精卵には、妊娠できる胚盤胞もあれば、流産をしてしまう胚盤胞もある。それがPCOSだからといって特別、流産率が高いとか妊娠しないとかではないと思います。

モモさんが流産を繰り返したのはどこに原 因があったと考えられますか?

内田先生 受精卵の問題であるのは間違いないと思います。受精卵には、妊娠が成立してそのまま進む受精卵と、流産に終わってしまう、妊娠にさえ至らない段階があります。それはどこに問題があるのか、今はわかりません。日本では臨床応用が認められていません が、PGTー A (着床前染色体異数性検査)をすれば、染色体の異常な胚盤胞は除いて正常な胚盤胞だけを移植できます。そういう時 代がいずれ日本にも来るでしょう。しかしながら、男女の産み分けなどにも使われる可能 性もあるので、簡単には進めてはいけない問題として、今はまだ臨床研究の段階です。

先生はどんな治療で臨みますか?

内田先生 副作用を少なくするという観点からは、アンタゴニスト法をしましょうと言います。排卵誘発方法を変えてみることで、発育卵子の内容も変わるかもしれません。クロミッドⓇも使えます。モモさんの主治医は、ロング法で治療していますが、ロング法は、卵巣が腫れたり腹水がたまったりする卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の副作用が強くな るという報告もあります。

しかし、 1 回目と2 回目は注射の内容を変えているので、 3 回目の採卵をしていればアンタゴニスト法にしているかもしれませんね。どういう周期で凍結融解胚を戻したのかがわかりませんので何とも言えませんが、 22 個の受精卵が胚盤胞に なり、トータル 6 回胚移植しているので、まだ胚移植していない凍結保存受精卵のなかに妊娠につながる受精卵があるのではないでしょうか。それが戻せていないだけかもしれません。主治医に凍結融解胚移植をしてもらうプランをしっかりと検討してもらい、残りの受精卵を相談しながら大切に使っていきましょう。モモさんは、年齢的にはまだまだ妊娠の可能性があると思いますよ。

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