子宮内膜症、卵巣嚢瘍 でも 良い卵子を採って 着床できますか?

子宮内膜症と卵巣嚢瘍になり右の卵巣からしか採卵できない状態に。

着床不全でもある状況で右の卵巣を頼りに完全自然周期で採卵をする べきか、刺激周期でいくべきか。

厚仁病院の松山先生に伺いました。

松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付 属大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。 3月11日に高松市で行われる日本レーザーリプロダクション学会の大会長 を務める松山先生。不妊鍼灸の講師を招聘してシンポジウムを行うなど、 新たな試みを通じて生殖医療を見つめるいい機会にしたいそうです。

ドクターアドバイス

●機能温存手術ができるなら検討の価値あり。
●低刺激周期法も選択肢の一つに。
ブリックさん(40歳)からの相談 Q.子宮内膜症で、昨年より体外受精を始めました。1回目はフォリス チムⓇで排卵誘発して7個採卵、移植をしても妊娠には至りません でした。その後の着床不全検査ではプロテインC活性、第12因 子ともに低く、Th1/Th2比は高く、ビタミンDも少なめでした。 2回目はうまく育たず、3回目ではゴナールエフⓇを使い6個採卵、 2つの凍結胚を移植しましたが妊娠できず。4回目の採卵後に卵 巣嚢瘍ができ、左の卵巣からは採卵できないと言われてしまいまし た。右から採卵できるか確認するため完全自然周期法を試したと ころ1個は採れました。次回も自然周期で採卵したほうがいいの でしょうか。また左の卵巣からは採卵できないのでしょうか。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

体外受精5回、着床不全検査でプロテインC活性、第12因子 ともに低い。

不妊の原因と なる病名

子宮内膜症、チョコレート嚢腫、着床不全

精子 データ

良好

漢方・サプリメント の使用

葉酸、ビタミンD、二至丹、シベリア霊芝、婦宝当帰膠、 水快宝、参馬補腎丸、亀鹿仙

まず、着床不全についてはどのように判断できますか。

松山先生 プロテインC活性、第 12 因子ともに低いことについては、低用量アスピリン療法で対処しているようなので妥当かと思います。また、 Th1/Th2 比についてですが、Th1 は細胞やウイルスなどの異物に反応して 抗体を作り、 Th2 はアレルゲンに反応すると いわれています。妊娠とも密接に関係していて、 Th2 が高いと妊娠に適しており、 Th1 が 高い場合は流産率が高くなるといわれています。

ビタミン D が少ないのも要因の一つです。これらの結果を見ていても、これだけしっかり調べているので、ほかにもいろいろな検査をしているのだろうと思います。FSH製剤の使い方も妥当と思われます。原因を追求し、計画を立てて対処してくれているのだと思いますよ。

また、移植については 3 回目で 2 つの凍結胚による移植を行うなど、毎回いろいろなことを考えながら対処しているのだと思われます。

もともと子宮内膜症だったブリックさんは卵巣嚢瘍になってしまい、左の卵巣からは採卵できないといわれたそうですが、左の卵巣の治療方法はないのでしょうか。

松山先生 ブリックさんはチョコレート嚢腫があると書かれていますね。チョコレート嚢腫がある人は若干ながら卵巣嚢瘍になりやすいといわれています。書かれた状況を読み取ると、左右の卵巣にチョコレート嚢腫があり、左の卵巣は超音波で見た限り大きくて採卵を妨げているようですね。そうなるとやはり右の卵巣から採卵していくことになるでしょう。

チョコレート嚢腫に対して機能温存手術ができる状態であれば、やる価値はあるかもしれません。機能温存手術とは、チョコレート嚢腫のみを摘出し、本来の卵巣組織を温存する手術法です。この方法は内膜症の再発の可能性はあるものの卵巣機能の低下は防げます。場所や大きさにもよりますが、検討の価値はあると思います。

右の卵巣から採卵していく場合、完全自然周期がいいのでしょうか。

それとも、4 回目まで採卵した時のように薬を使って排卵誘発をしたほうがいいのでしょうか。

松山先生 私は自然周期か低刺激周期を検討してみてもよいだろうと思っています。実際に、完全自然周期法を試したところ 1個採れたものの受精しなかったわけですが、ご本人としては、これまで何度も排卵誘発剤を使ってきたので、もっと卵巣にやさしい方法を試したかったのかもしれませんね。

ただ、完全自然周期の場合は採卵数は大抵 1 個なので、発育停止となることもあります。そこで、刺激周期法に比べて卵巣への負担が少ない低刺激周期法を考えてみてもよいのかもしれません。採卵数が少ないという点で不利に思われるかもしれませんが、私の経験上、質はそう悪くないと思います。また、年齢が上がると刺激周期法も低刺激周期法もそれほど採卵数は変わらないことが多いです。それなら、卵巣にとって比較的やさしい方法で排卵できる方法がいいのではと考えます。

今後も不妊治療を続けるにあたり、アドバイスをお願いします。

松山先生 今回のポイントはいくつかあります。着床不全、チョコレート嚢腫と卵巣嚢瘍、そして採卵までのアプローチ、つまり排卵誘発です。個人的には、現在のクリニックで毎回対策を立てながら治療を受けている点で安心だと思います。そのうえで、今後の進め方について検討するなら、左の卵巣から採卵できなくなった原因のチョコレート嚢腫についてどのように対処するかということ。それと、右の卵巣からいかにして効率的に採卵を行うかということだと思います。一度、ご自身のチョコレート嚢腫が本当に機能温存手術が可能な状況かどうか、また低刺激周期法についてなど、主治医と相談してみてはいかがでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。