高齢妊娠-出産ではどのような点に注意が必要ですか?

高齢になるほど増えるとされる、妊娠・出産のリスクには、どのようなも のがあるのでしょうか?

また、その対処法は?

かしわざき産婦人科の 柏崎祐士先生に伺いました。

 

柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年まで日本大学板橋病 院で主に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産 婦人科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本 生殖医学会生殖医療専門医、日本婦人科内視鏡認定医。O 型・ おとめ座。極めてまれな例ですが、当院でのこれまでの最高齢初 産は48 歳。体外受精ですが、提供卵子などではありません。帝 王切開でしたが、元気な赤ちゃんが生まれました。

ドクターアドバイス

40代の方に限らず ストレスは大敵。

あ せる気持ちは抑え、 ご夫婦仲良く過ごし てください。

年齢は目安に過ぎない。35 歳以下も油断は禁物

日本産科婦人科学会では、 35 歳 以上の初産婦(初めて子どもを産 む妊婦)を「高齢出産」と定義し ています。1993年までは 30 歳 以上でしたが、 30 歳以上の初産婦 が増えたこと、またWHO(世界 保健機関)をはじめ、諸外国の定 義にならって引き上げられました。

男女雇用機会均等法が施行され たのが1986年で、それ以降 キャリアウーマンが増え、 20 代で 妊娠する女性が急激に減りまし た。今の時代に 30 歳以上を高齢出 産と定義したら、ほとんどの方が 高齢出産になってしまう可能性が ありますからね。

でも、「高齢出産」というのは あくまでも定義です。1993年以降に女性の体が妊娠しやすく変 化したわけではありませんし、 35 歳を境に急激に妊娠しにくくなる というわけでもない。少しずつ年 齢を重ねるごとに卵子が老化する のは、今も変わりはないのです。 「 35 歳以上は高齢出産になります から気をつけて」という一応の目 安であり、逆を言えば「 35 歳以下 だからまだ安心」とは考えてほし くないですね。

仕事にやりがいを覚えると結婚 や出産を後回しにしがちですし、 結婚しても「まだ子どもはしばら くいいかな」と先延ばしする方も います。もちろん、人それぞれ理 想とするライフスタイルに違いが あることとは思いますが、もしも 「いずれは子どもが欲しい」と願 うなら、早いうちに検討されるに 越したことはないと思います。医 学的には、年齢を重ねるごとに妊娠しにくくなり、出産にもリスク が増えるということは覚えておい てください。

若くても、高齢でも、 リスクはゼロではない

精子と違い、卵子の数は生まれ た時から、というか胎児の時から 決まっています。いわば、作り置 きされている状態で、数にも限り があるのです。ホルモン分泌の安 定していない 10 代前半の妊娠にも リスクがありますが、作り置きさ れた卵子ですから、どうしても加 齢にともなって質が劣化してしま います。

まず卵子の質が低下することで 起こりやすいのは、流産や早産で す。染色体異常が何らかの原因と考 えられますが、今の医学では決定 的な改善策や予防策はありません。

また、 35 歳以上になると、先天異常の発症率も高くなり、 25 ~ 29 歳で1・ 88 %、 35 ~ 39 歳で2・ 02 %、40 歳以上では2・ 38 %というデー タもあります。加齢が影響しやす いのは、先天異常の中でもやはり 染色体異常で、ダウン症の発症率 も 20 代が 0.1 %未満なのに対し、 35 歳以降は 0.3 %、 40 歳以上になると 1%にまで上がります。

不妊治療によりようやく妊娠し ても、高齢だと出産までのリスク も多くなります。常位胎盤早期剥 離や癒着胎盤といった胎盤異常が 増えるのは間違いなく、重症の場 合は胎児だけでなく母体の命を脅 かすこともあります。

妊娠後期には、かつて妊娠中毒 症と呼ばれていた妊娠高血圧症候 群を発症するリスクも高くなりま す。もともと血圧の高い方、肥満 ぎみの方、ストレスが多い方など が罹りやすい傾向にあるとされて いるので、妊娠前から注意しま しょう。
肥満、ストレスは高齢妊娠・出産 に限らず悪影響を及ぼしますので、 ぜひ妊活中に改善してください。

高齢を理由に 諦める必要ナシ!

高齢出産の場合、帝王切開にな る可能性が高くなります。産婦人 科ではなく、不妊治療専門のクリ ニックで治療した場合は、産院を 紹介してもらうことになります が、リスクが高いと一般の産院で は受け入れに難色を示すことも少 なくありません。

リスクが高い場 合は各自治体の周産期母子医療セ ンターなどが対処しますが、受け 入れられる人数には限界がありま す。そこで、トリアージ方式(患 者の重症度に基づいて、治療の優 先度を決定して選別を行うこと) が採られ、高齢でも出産にそれほ ど危険がないだろうと見なされた場合は、一般の産院に移されると いうケースも生じます。

こうした措置は患者さん側から すると“たらい回し”にされる印象 を受けるかもしれませんが、いたし かたないこととご理解ください。

まれなケースですが、不妊治療 専門のクリニックからの紹介を受 けられず、「お好きなところで産 んでください」と言われることも あるようです。その場合は、ご近 所の産院に相談してください。各 産院は周産期母子医療センターと 連携し、出産リスクが高い妊婦がいる場合はあらかじめ伝えます し、要望や必要があれば周産期母 子医療センターへの紹介状も書き ますので安心してください。

妊娠や出産においては、年齢が 高いと確かにリスクは増えます が、だからといって諦める必要は ありません。ただ、若い方よりも 少し気を使う必要があるというこ とだけ。高血圧や糖尿病の引き金 になる肥満を避け、ストレスを溜 めず、規則正しい生活を心がけて ください。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。