高齢だと妊娠率は

胚盤胞になっても 高齢だと妊娠率は 低いのですか?

胚盤胞で移植すると妊娠率が高いといわれていますが、 40代になってもその確率は変わらないのでしょうか?

ファティリティクリニック東京の小田原靖先生にお話を伺いました。

 

小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東 京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996年恵比 寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリ ニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門の カウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けてい ます。「そろそろ年齢を感じる時期にさしかかっているのかも」という 先生。無理をしすぎず、しっかり休養をとったり、休日には趣味のサー フィンを楽しんで心身のメンテナンスを行っているそうです。

胚盤胞にはこだわらず、 初期胚の移植も考慮に

高齢だから胚盤胞にならないとい うわけではありません。

若干確率が 低下する程度なのですが、そこまで 到達する分割の状況で、発育不良胚 など健全でない可能性がある胚が増 えてきてしまうのは事実です。

当院では基本として胚盤胞での移 植を目指していますが、個人によっ ては胚盤胞まで到達しない方も時々 いらっしゃいます。

また、採卵数が 2、3個くらいだと、良好な胚盤胞 が得られないケースもあります。

そのような場合は移植をキャンセ ルするのではなく、2日目、3日目 の初期胚を戻すこともあります。

実 際、グレードのいい胚盤胞になら なかった方が、3日目の胚を移植し て妊娠・出産したケースも。

まずは移植の機会が得られなかったら、そ こから先へ進めません。

卵子の獲得 率が少なくなる高齢の方は胚盤胞で 移植することにこだわらず、場合に よっては初期胚で移植するという考 え方もあるかと思います。

42歳くらいになると 胚盤胞の8割に 異常が出現

可能なら胚盤胞まで到達するの を目指すわけですが、 40 代の方だと、 グレードのいい胚盤胞になってそ れを移植したとしても、妊娠率は明 らかに下がっていきます。

現在、日本で行われているのは形 態的な評価で、中身の詳細な評価は できません。

アメリカなどで行われ ているPGS(着床前遺伝子スク リーニング)のデータを見ると、胚盤胞で凍結された胚でも、 40 歳を超 すと正常な染色体をもっているも のは非常に少ないという報告があ ります。

35 歳くらいまでは 40 %以内 を保っていますが、 40 歳を超すと65 %、 42 歳になると約8割の胚盤胞 に染色体異常が見られる、となって います。

日本ではまだPGSが一般的に 行われていないので、中身の評価を するのが難しいのですが、そのよう なデータから考えると、いい胚盤胞 ができたとしても本当にいいのは4個に1個程度の割合。

ですから、 胚が少ないよりはできるだけ多い ほうがいい。

高齢の方の場合、形 態的に良好な胚盤胞が5、6個でき てから移植をすることが増えてく ると思います。

では、国内でもPGSが誰でも受 けられるようになれば妊娠率は上が るのか、ということですが、これは 何ともいえません。

年齢が上がると 胚盤胞到達率が下がるので、PGS ができる胚も限られてきます。

海外 でPGSを行った方のケースでは、7個の胚のうち、1個しかできな かったということも。

40 代でPGS が有効な方法になるかどうかは、明 らかな結果が出ていないというのが 現状です。

年齢ではなく 個人に合った子宮内膜 調整法の選択が大切

妊娠に関わるファクターでもっ とも重要なのは胚の質だと思いま すが、年齢が上がってくると胚を戻 す場所である子宮内膜の状態が良 くないというケースも増えてくる ので、移植法というのも大事な要素 になってくると思います。

移植法にはホルモン補充周期と 自然周期の2つがあり、今まではホ ルモン補充周期を良しとする傾向 があったんですね。

しかし、治療成 績を見ると自然周期も決して悪くない。

子宮内膜が薄い方はホルモン を補充したほうが確かに厚みは出 てきますが、補充を増やしていくと 採卵の周期と同じようにエストロ ゲンの数値が上がるなど、自然周期 に比べるとホルモンバランスが大 きく変わってきてしまうことも。

当院では、子宮内膜に大きな問 題がない場合は、高齢の方でも自 然周期で移植するという選択が増 えてきており、半数近くの割合に なっています。

胚移植の子宮内膜調整法という のは単純ではなく、「 40 代だからこ の方法がベスト」というものはあり ません。

自然周期がいいか、ホルモ ン補充周期がいいか、あるいは自然 周期でHCGも打って、その後、しっ かりホルモン補充をするほうが適 したケースも。

さまざまなバリエー ションの中から、その方に一番合っ たものを選んでいくことが大切に なってくると思います。

骨盤内の血流を良くして 少しでも条件の向上を

子宮内膜の環境を改善するため のサプリメントなどもあるようで すが、確実に有効性が認められて いるものはない気がします。

では、 環境を良くするためにどうしたら いいか。基本的な考え方として、 子宮内膜は血流量に左右されるの で、骨盤内の血流を良くすること が大切です。

解剖学的に子宮動脈 や卵巣動脈はとても長く、血流が 滞りやすいんですね。

全体の条件を少しでも向上させ るために、運動や鍼 はり 、漢方、冷え やストレスの解消など、ご自身で できることもあると思います。

「年 齢が高いから」と諦めるのではな く、つねに前向きな意識で治療に 臨んでいただきたいですね。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。