免疫力で立ち向かう

病気にならない! ウイルスをやっつける!

空気が乾燥するこれからの季節は、新型コロナウイルスだけでなく、さまざまな感染症の流行が心配です。「免疫力」を上げて、元気に過ごしたいですね。でも、そもそも免疫って何?    どんな仕組み?    今、知っておきたい免疫についてのお話を、免疫学の第一人者である奥村康先生が、わかりやすく教えてくださいました。
順天堂大学医学部免疫学特任教授/アトピー疾患研究センター長 奥村 康 先生 千葉大学大学院医学研究科修了。スタンフォード大学留学、東京大学医学部講師を経て、順天堂大学医学部教授、同大学医学部長を歴任。サプレッサーT細胞を発見するなど、免疫学の国際的権威。ベルツ賞、高松宮奨励賞、I SI引用最高栄誉賞、日本医師会医学賞などを受賞。

2チームに分かれて働く免疫 獲得免疫チームは体を守る軍隊

免疫という言葉はよく使われますが、その実態は知らない人が多いと思います。免疫は大きく二つの系統に分かれていて、特徴がそれぞれ違っています。

一つは生まれながらに備わっている「自然免疫」。もう一つは「獲得免疫」といって、特定の病原体に感染したり、ワクチンを接種することで、後天的に獲得した免疫機能です。

獲得免疫から説明しますと、T細胞、B細胞という両横綱がいて、この免疫はたとえて言うと軍隊のようなものです。細菌やウイルスが体に入ると、B細胞が抗体というミサイルで敵を攻撃します。そして残った敵を、今度は地上軍のT細胞が出動して全滅させます。軍隊が出る時は必ず発熱します。熱が出た時は獲得免疫が外敵と戦争しているのです。

この獲得免疫は、年齢の影響をあまり受けません。  100歳の人にインフルエンザのワクチンを打っても、若い人と同様の効果が認められます。これは人が生きていくうえで基礎的な防衛システムのため、長持ちするようにできているのです。

自然免疫チームのNK細胞は、体の平和を守るお巡りさん

軍隊である獲得免疫は、外敵の侵入を察知した時だけ出動し、ふだんは稼働せず休んでいます。

一方、もう一つの免疫系統である自然免疫には、NK細胞という主役がいます。こちらは毎日休むことなく体中をパトロールする、働き者の街のお巡りさんにたとえられます。つねに最前線で異常がないかをチェックし、少しでも異物の侵入や発生を見つけたら、ただちに攻撃してつぶす、生まれながらの殺し屋(ナチュラル・キラー)です。

その働きぶりは、なかでもがんを防ぐことに重要な役割を果たしています。人は1日に約1兆個の細胞が新たにでき、そのうち5000個程度が遺伝子の突然変異からがん細胞になると考えられています。NK細胞は、がん細胞がまだ少ないうちにつぶすことで、がんの発症を食い止めます。不良少年の    芽を大人になる前にたたくような、まさにお巡りさん的な存在がNK細胞なのです。

しかし、軍隊は年をとっても影響がないのですがお巡りさんは60 ~70歳くらいになると弱くなりがちです。そのため発がん率が上がってきてしまいます。長生きの人というのはお巡りさんが強い人です。

また、NK細胞は、実験によって外からくる風邪などのウイルスと最前線で戦っていることがわかっています。年に 2 回以上、発熱のある風邪をひく人は、若くてもお巡りさんが弱い可能性があります。

新型コロナウイルスも一般的な風邪のウイルスと構造が少し違うだけなので、NK細胞が弱いと感染しやすい可能性があります。

体が健康で平和な時に、がん細胞やウイルスをつぶしているお巡りさんを強くしておくと、軍隊が出る必要がありません。お巡りさんが強い人はなかなか病気にならないのです。

このように、軍隊であるT、B細胞に比べ攻撃力は低いものの、NK細胞が免疫力という体の防衛システムのカギを握っています。一般の人が、免疫力が高い低い、上がる下がる、というのは、実はお巡りさん=NK細胞の力のことなのです。

免疫力を高めるには NK活性をキープする

NK細胞の力はある程度コントロールすることができます。NKの働きは、ホルモンの影響で昼間は高く、夜には低くなる特徴があります。そのため、徹夜をしたり、時差があるところに旅行するなど、規則正しい生活が壊れると下がってしまいます。

また、激しい運動はNKを低くします。激しい運動をするとNKが上昇しますが、終わると始める前より低下してしまうのです。運動するならジョギングなどより、速足のウォーキングがおすすめです。

さらに免疫力を下げる大きな要因になる   のはストレスです。ストレスには「立ち向かっていけるストレス」と「逃げ場のないストレス」の2種類があり、大切な人を失った悲しみなど、自分にはどうしようもできない、受け身的な「逃げ場のないストレス」に、NK細胞は大変弱いのです。試験シー    ズンの高校生や受験生が、風邪をひきやす   いのもこのストレスによります。

免疫は心と連動しています。ちょっとした精神的なことや、笑うだけでも見事にNK細胞の活性は上がります。また、ある動物実験で、ストレスによる免疫力の低下は、隣にいる元気な動物にも     うつってしまうことがわかっています。免疫力を下 げたくないなら、なるべく明るい人のそばにいるとよいかもしれません。

免疫、神経、ホルモンは 3つが協働する取締役会

今年は、新型コロナウイルス感染症がトリガーとなり、にわかに免疫の世界が皆さんの注目を浴びるようになりました。しかし、免疫には、心臓や肺などの臓器のように目に見える形がなく、その働きを実感することはできません。人の体で目で見て仕組みを説明できないものには、免疫のほかにも神経と内分泌、いわゆるホルモンがあります。実はこの3つは人体のすべてをコントロールしていて、健康を維持するために大変重要な働きをしています。

免疫、神経、ホルモンは、会社でいえば取締役会   のような存在です。デパートでたとえると、お店ではお客さんは取締役には会いません。会うのは店員    さんです。店員さんは体でいえば手や指などに当たります。店員さんも非常に大事ですが、実際の組織を運営し、コントロールしているのは取締役会の免疫、神経、ホルモンです。この3つはとても仲がくて、いつも一緒に働きます。免疫が働く時は、必ず神経とホルモンが協働しています。

3つ欠けるけでも人は生きてはいけません。この3つがうまく 連携していなければ、「免疫力」というものは生まれないのです。免疫力を上げてウイルスを遠ざけたり病気にならないようにするなら、免疫、神経、ホルモンの状態を一緒に考えることが大切です。

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