ダメなときは降りたらいい

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.27

女性にとって不妊治療は 人生そのもの。

2人目or昇進の選択は 贅沢な悩み? それとも!?

今月も秀子先生から 貴重なご意見を伺いました。

りっつさん(会社員• 40歳) Q.現在、40歳で2人目の不妊治療をしています(1 人目は現在6歳です)。先日採卵をし、胚盤胞ま で育ちましたので、次の周期で移植を考えていた ところ、先日、会社から昇格の内示がありました。 すぐに妊娠した場合、長期のキャリアプランを考 えてくれている上司を裏切ることになってしまう ので、採卵は継続しながら1年待ったほうがいい のかなとも。一方、前々から2人目宣言していま すし、若ければ待てますが、さすがに40歳とも なると厳しいため、自分のことだけを考えればす ぐにでも授かりたいと思っています。

りっつさんの投稿に 寄せられたコメントです!

匿名(主婦・45 歳) 極論ですが、よほどの専門職で特別な技能が必要である仕 事ではない限り、代わりはいくらでもいます。いないと会 社が大変なことになるということはないですよ。40歳と 41歳じゃ妊娠率も流産率も違います。絶対に妊娠するわ けでもないですから、移植してみたらどうですか? 移植 しなかった場合、採卵は続けるとのことですが、いつまで 期限を決めずに治療されるつもりでしょうか?
ぺんぺんさん(会社員・39 歳) 2人目の育休から復帰して1年半。会社に気を使うお気持 ちはよくわかりますが、たとえばこれで昇格後、すぐ妊娠 してひんしゅくを買ったとしても、仕事はきっと巻き返せ る時が来るものだと思います。でも妊娠出産にはタイムリ ミットがあるので、私は昇格しようがしまいが、3人目に チャレンジしますよ! 上司は励ましてくれますが、自分 がいなくても代わりや後に控える社員はたくさんいます。 それに妊娠なんて周りに断ってするものでもないし、既婚 の女性なら会社だって想定内では?

仕事が絶対であれば 多分、迷わないはず。 後悔しない道を

昇格を取るか、 2 人目の出産を取るか?
結局、将来、何で後悔するかだと思います。
昇格したとして、じゃあ 2 人目を産んではいけないか?
といえば、それも違うと思うんですよ。
自分にとって本当に仕事が絶対的なものである人は、多分悩みません。
たとえ自分の稼ぎがすべてベビーシッター代に消えても、あなたを続けることでしょう。
あれもこれも取りに行こうとするから難しい。
だけど、仕事にとってあなたが唯一無二のものかといえば、おそらくそれほどでもないのでしょう。
世の中、仕事で唯一無二の存在になれるのは、ほんの一握りの人。
多くの人はそうではないのですから、だったら自分の人生にとって何が大切か考えるべきです。
自分の価値観をどこに置くかだと思うんですね。

休んで当たり前と 権利だけを主張せず、 周囲を納得させる

労働基準法の規定で、女性は産後8週間は働くことができません。
たった2カ月ほどですから、厳しい言い方をすれば、穴を開けてもいいように仕事をすることだってできるかもしれないし、もっといえばそういう姿勢を見せておけば、会社も待ってくれるかもしれませんね。
昇格に働きかけてくれた上司にも、「恩を仇で返すことになる」なんて言わず、「 2 人目をつくるために不妊治療は続けていますけれど、それでも昇格させていただいて大丈夫でしょうか?」と、きちんと確かめるべきです。
「それはちょっと困るかもしれない」と言われたら、「だったら昇格はお断りします!」でもいい。
昇格にもちょっと未練があるわけでしょう?
また数年後にチャンスが巡ってくるかもしれません。
それを最初から“もし妊娠したら休んで当たり前”みたいに思うとしたら、少し違うんじゃないかな?本当に必要とされているなら、自分で動ける間は、自分がいなくてもいいように用意周到に準備!
それから産休に入れば、職場のみんなに待ち望んでもらいながら、産後に復帰することができると思います。

女性の働く環境が 変化する過渡期に どんな選択をするか

いくらマタハラやジェンダー論が巷で交わされるようになっても、今の社会が働く女性にとって十分に優しい環境かといえばそうではありません。
現実として社会がそうである以上、家庭と仕事、女性がどちらも取りたいなら並の努力ではダメ。
だから両方取りにいきたいのなら、周囲にチャレンジ宣言をして、二兎を追ってみるのもいいと私は思うんです。
不妊治療も昇格も、ダメなら途中で降りればいいわけですし。
昇格を理由に 2 人目の出産を諦めれば、仕事を言い訳にできる分、もしかしたらご自身は楽かもしれません。
今は子育てしながら家庭と仕事を両立させていくことを社会が推進していて、2020年までに社会の指導的地位に女性が占める割合を3割程度に引き上げることを政府が目標にしている時代。
今、ちょうど過渡期なんですよね。
これからは女性の社会進出がさらに進み、子どもを産み、育てながら働くことが、さらに特殊な状況ではなくなっていくでしょう。
何度も厳しいことをいうようですが、その時に後悔しないためにも、自分の人生だからよく考えたほうがいいと思います。

秀子の格言

「自分の価値観をどこに置くのか? どちらも必要ならチャレンジを。

ダメなときは降りたらいいのです」

 

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都 第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療 をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田 村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現 クリニックを開設。春は親孝行も兼ねて、毎年、母 娘で嵐山・嵯峨野の桜を人力車でひとめぐりするとい う先生。もう一つ、この季節の密かなお気に入りは、 賀茂川べりの車窓から優雅に眺める桜。「人込みを 避けられるし、渋滞でも快適!」。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。