採卵がうまくいきません

卵胞はたくさん育つのに その10分の1程度の 数しか卵子が採れません

堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療セン ター不妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニッ ク院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補 助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・加齢と不 妊についての研究に取り組む。B 型・みずがめ座。2匹目として飼い 始めた猫ちゃんと距離を縮められなくて悩んでいた先生ですが、最近、 歴史的な和解をしたそう。気が向いた時に可愛く鳴いて、ブラッシング をおねだりするツンデレさがたまらないとか。
ペコさん(27歳)からの相談 Q.今まで4回採卵を実施。誘発方法を変えてやってきましたが、卵胞はたくさん育 っても肝心の卵子が採れません。1回目はショート法で卵胞20個/採卵2個(D 11)、2回目はロング法で卵胞 20 個 / 採卵2個(D13)、3回目はクロミッドⓇ で卵胞6個 / 採卵0個(D15)、4回目は3周期ピルで卵巣を休めた後、ロング 法で卵胞20個/採卵2個(D16)でした。1回目は「遺残卵胞が原因でうま く採れなかったのでは」と説明を受けましたが、4回目は「卵胞壁から卵子が剥 がれなくて回収できなかったのではないか」ということでした。そして、「できる 卵胞に対して10分の1程度の確率でしか卵子が採れないので、次に採卵すると したら、もっと強い注射で卵胞の数を増やしてやってみるしかない」とも。それ で本当に採れるのでしょうか。ほかに良い方法はありますか?

PCOSの疑い

卵胞はたくさん育つのに卵子が採れないのは、どんなことが原因だと考えられるのでしょうか。
堀川先生 卵胞は育ってたくさん確認できるのだけれど、針を刺してみると空胞が多い、ということ。
おそらくPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)のような体質ではないでしょうか。
卵子の回収率は、通常だと育った卵胞のだいたい7~8割くらい。卵胞 20 個のうち 15 、 16 個程度だと思うのですが、ペコさんは2個しか採れないということですね。
これは確かに低い回収率だと思います。
さまざまな卵巣刺激法を試しても同じよう な結果だったということは、刺激のやり方が間違っているのではなく、採卵のタイミングが問題なのではないでしょうか。
まだ卵子が未熟なうちに決めてしまっている可能性があります。
未熟だと、担当医の先生がおっしゃるように卵胞壁から卵子が剥がれにくくなってしまうことがあるんですね。
PCOSの人の場合、卵胞が育ちすぎると、 卵巣が腫れてしまうOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こす危険性があるので、少し早めの段階で採卵を決めてしまう傾向があります。
それでかえって卵子が採れなくなってしまうというケースはありますね。

採卵のタイミング

ペコさんが治療している病院では、採卵2日前の午後 11 時にHCGを注射して、採卵は 2日後の朝9時と決まっているそうです。
堀川先生 採卵 36 時間前にHCG注射をする というのは、ほかの人にとってはほどよいタイミングかもしれませんが、この方にとってはまだ早いのかもしれません。
ちょっとでも遅くなると排卵してしまうのでリスクはありますが、次回は 37 ~ 38 時間、場合によっては40 時間空けるなど、もう少し成熟するまで待 ち、ギリギリのところで採卵をするという手もあると思います。

誘発法の考え方

卵巣刺激法についてはどうですか。担当の先生がおっしゃるように、もっと強い刺激をしたほうがいいのでしょうか。
堀川先生 刺激についてはそれぞれの施設でポリシーがあり、やり慣れている方法があるので何ともいえませんが、当院だったら、もしPCOSということであればOHSSを回避することを考えて、アンタゴニスト法、もしくはフェマーラⓇなどのレトロゾールを使った低刺激法をご提案すると思います。
また、高い刺激で卵胞がたくさん育ちすぎ てしまうと、血中のエストロゲン値が高くなりすぎて、卵子の成熟度を判断することが難しくなってしまうことも。
その点を考えても、弱めの刺激のほうがいいかと思います。
まだ年齢がお若いので、それでもある程度の採卵数は期待できるはず。
あとは、前述したように採卵のタイミング ですね。これだけの数の卵胞が育つことを考えると、残っている卵胞が空胞しか育たないというのはちょっと考えにくい。
最後のところで工夫をすれば、成熟した卵子を採ることは可能だと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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