人工授精で精液を 直接注入することは ありますか?

大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入 局。産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長と して4年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を 授与される。新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務 を経て、1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。今年のGWは 奥様と二人で念願の温泉旅行へ出かけたという大島先生。そのついでに 30年以上ぶりに出身校の自治医科大学へ。当時、大学病院の看護師 をされていた奥様との出会いの場所でもあるとか。
ちぃくんさん(39歳)からの相談 Q.これまで4回人工授精を受け、まだ妊娠に至っていません。私の地域には不妊 専門の病院がないため、総合病院の産婦人科に通って治療を受けていますが、 人工授精の方法に疑問があり、質問させていただきました。先日、担当医が替 わったのですが、以前の先生は精子の選別や注入前の消毒をしていたのに、新 しく担当になった先生は、容器に入れた精液を渡すと「じゃあ、しましょうか」 といってすぐに取り掛かり、消毒もなく精液をそのまま注入されました。人工授精でこのようなやり方をすることもあるのですか? また、今回、生理の始ま り方がいつもと違い、黒っぽい血が2日間少量ずつ出た後に普通の生理になり、 7日間続きました。ここ数カ月、生理はクロミッドⓇなどの服薬の影響もあるの か、量も以前より少なく4日ほどで終わっていたので、それも気になっています。

パーコール法の確率

現在行われている人工授精において、ちぃくんさんが受けたような、精液を直接子宮内に注入するやり方はあるのでしょうか。
大島先生 あまり聞いたことがないですね。
私が医者になった昭和 60 年前後はまだこのよ うなやり方をしていました。
精液から雑菌を取り除いて洗浄しながら、遠心分離器にかけて状態の良い精子だけを濃縮する「パーコール法」が確立されたのが平成の初め頃。
現在では、ほとんどの施設がこの方法で人工授精を行っています。
持って行った精子をすぐに注入されたということは、おそらく遠心分離をしていないのではないでしょうか。

異物が混入し抗体に

直接注入するのは好ましいやり方ではないのですか?
大島先生 今から考えると昔はずいぶん無謀なことをしていたと思いますが、そのままの精液はとても汚いものなんですね。
雑菌が含まれているし、下着の繊維なども入っているかもしれない。
もし何らかの菌に感染した場合、卵管の炎症や子宮内膜炎を引き起こす危険性があります。
また、3 ml 、4 ml と子宮の中に精液を全部入 れてしまうと、一部はお腹の中にこぼれてしまうと思うんですね。
そうすると腹膜は精子を異物と認識しますから、抗体をつくってしまう。
次に精子が入ってきた時に拒絶してしまう可能性もないとはいえません。
パーコール法なら、100%ではありませ んがほとんど菌を除去できて、異物の混入を防げます。
注入する量も濃縮して 0.5ml にする ので、お腹にこぼれてしまうこともないんですね。
人工授精の際、タラタラと流れ出る感じがあり、その後も出血と水っぽいものが出てきたということですが。
大島先生 精液の中には子宮を収縮させる成分が含まれているので、流れ出てしまったのでしょう。
収縮が強いと痛みが出る場合もあるので、ご本人にとっても負担があります。
これはすぐに先生に確認されたほうがいいでしょう。

ステップアップも視野に

今回の生理の変化についてはどう思われますか。
大島先生 誘発の方法に問題があるのではないでしょうか。
クロミッドⓇを飲まれているということですが、もう限界かもしれません。
あと1回くらいでクロミッドⓇはやめて、その後は注射だけのやり方に変えたほうがいいと思います。
最後に、今受けられている治療法について ですが、人工授精4回目とのこと。
現実的なお話をすると、 39 歳のご年齢で人工授精を4 回受けても、出産まで至る妊娠率はほぼ0%というデータが出ています。
遠くまで足を運ばなくてはならなくても、一度は不妊治療専門施設を受診されてみたほうがいいのでは?
通院は大変かもしれませんが、覚悟を決め て、1年くらい集中して本格的な不妊治療を受けることを考えられてもいいかと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。