卵子提供について考える

ドクターに聞く不妊治療の未来 不妊治療と 卵子提供

年々増えていく海外での卵子提供。

今後、日本が進むべき道とは?

卵子提供や代理出産など第三者が関わる特別不妊治療について、いまだ法整備が追いついていない日本。

ジネコはユーザーを対象にアンケートを実施し、3割が卵子提供を検討したことがあり、9割が法律での容認を望んでいることがわかりました。

卵子提供の必要性や課題、海外と日本との違いを含め、今後の進むべき方向について、セントマザー産婦人科医院の田中先生にお話を伺いました。

田中 温 先生 順天堂大学医学部卒業。越谷市立病院産科医長時代、 診療後ならという条件付きで不妊治療の研究を許され る。度重なる研究と実験は毎日深夜にまで及び、 1985 年、ついに日本初のギフト法による男児が誕生。1990 年、セントマザー産婦人科医院開院。日本受精着床 学会副理事長。円形精子細胞の論文が完成し、米最高 峰の出版社への3回目の投稿が決まったという田中先 生。同時に、卵子提供についても「誰にとっても身近 な問題だと知っていただくために、提唱し続けたい」 と揺るぎない信念で語ってくださいました。

先生のつぶやき

子どもを授かりたいという思いは、夫婦とし て、女性として、人として、ごく自然な感情 です。

一組でも多くの不妊に悩むご夫婦が、 国内で自由に、希望する治療を受けられる日 が訪れることを切に願っています。

法整備が進まない日本と 海外との違い、卵子提供の現状は?

■生殖補助医療に関する法整備が進んでいない日本は、卵子 提供の議論も止まっているように見受けられます。そこで海 外での治療を視野に入れていたり、実際に治療を行った患者 さんがいるという現状ですが……。

田中先生 海外での卵子提供というと、アメリカやタイなどが 主流で、いずれも各医療機関の私設運営によるものでした。

台湾では、国が定めた「人工生殖法」という法律のもと、 日本の厚生労働省と同様の機関で生殖補助医療を管理・運営 するので、安全性は群を抜いています。

また、全世界に向け、 卵子提供を国営で行うと発信していることも注目すべきこと です。

国の取り組みとしてはイギリスでも指定病院で不妊治療と 卵子提供を行っていますが、無料であるがゆえに患者さんが 多く、治療開始までに何年もかかる。

医療レベルもあまり高 くはありません。

■国家として卵子提供に取り組む台湾などの諸外国に比べて、 なぜ日本では進捗が遅いのでしょうか?

田中先生 根源は、生殖補助医療に関する法律がまったくない ことでしょう。

そのデメリットの一つは、卵子提供者のプラ イバシーと生まれてくる子の「出自を知る権利」の両方があ やふやになっていること。

もう何年も繰り返し議論されてい ますが、一方では「提供者のプライバシーは守られる」、一方 では「 15 歳になった子が希望すれば情報を開示する」。

そのよ うな食い違いのため、提供者・被提供者ともに大きく傷つく ことが問題です。

卵子提供の賛否は、 立場によって異なる

■一般的に卵子提供の賛否を募ると否定的な意見が多いので すが、現在不妊治療中の 30 ~ 40 代のジネコ読者を対象にする と、意見はまったく異なりました。

田中先生 子どもがいる人と不妊治療中の患者さんは、そもそも立場が違うのですから、差があって当然です。

不妊とは関 係なく、自分の立場と異なる人は「認めてはいけないのでは?」 となり、不妊治療中や高齢など自分の置かれている立場で考 えた人は「緩和してほしい」「もう少し緩和されても良いので は」と考える。

これが現実だと思います。

■先生は卵子提供に前向きなご意見をお持ちですが、きっか けはどのようなことですか?

田中先生 今後の不妊治療において、卵子提供が必要になると 確信していたからです。

社会状況から晩婚化が進み、卵子の 老化に悩む女性が増えることは、予測するに難くありません でした。

そして今、不妊治療の現状を見ると、患者さんの平均年齢は 39 歳。妊娠率はかなり低く、妊娠しても流産することが少 なくありません。

しかし、国は女性の年齢 43 歳を上限に決め、40 歳未満で治療を開始した場合の治療費助成を6回、 40 歳以 上は3回というふうに、回数も減っています。

不妊治療で生 まれてくる子どもは年間2万人。

新生児100万人中の2% に過ぎないかもしれませんが、少子高齢化・人口減少の問題 から、国にはもっと本気で考えていただきたいですね。

海外で受けられる治療を 日本で受けられない現実

■インターネットやほかのメディアからの情報で、卵子提供は 可能だと知りながら、国内ではその医療を受けられない。そ のため、海外での治療を選択するケースも少なくありません。 今後、卵子提供はどのように変化するのでしょうか?

田中先生 当院から台湾の医療機関を紹介し、卵子提供による妊娠出産に至った患者さんのケースは多々あります。

台湾の 利点は日本語が通じ、物価が安く、国が責任を負うなど、受 け入れがしっかりしていること。

高齢が不妊原因の場合や治 療が長期にわたっている患者さんは、台湾での卵子提供を選 択肢の中に加えたり、前向きに検討しても良いのでは、とい うのが現段階での私の見解です。

■最終的には、日本で治療を受けられることが望ましいとお 考えですか?

田中先生 そうですね。

ほかの国で同じように悩み苦しんでい る人が卵子提供を選べているのに、なぜ日本では受けられな いのか。

発想は至ってシンプルです。

■以前、「卵子提供は、子どもを諦めていく患者さんを救う 一つの方法だ」と唱えられていましたが、現在も同じ思い ですか?

田中先生 もちろん、それが一番大きなテーマです。

国内の状 況は、今が一番停滞しているように思われますが、逆をいえ ば、むしろこれは明るい兆しと捉えられるのかもしれません。

台湾で卵子提供を受け、妊娠し、子どもを授かる幸せな夫婦 が増えれば、卵子提供が医療として成立していることを理解 していただけるでしょう。

そして「なぜ日本でできないのか」 という声が必ず上がってくるはずです。

何年かかるかはわか りませんが、諦めるしかなかった患者さんの選択肢が広がり、 望んだ治療を受けられる環境が整う日を、私は待ちたいと思っ ています。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。