1度目の凍結胚を戻す前に 2度目の採卵をして ストックしておくべき?
福井 敬介 先生 1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に 入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産科婦人 科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カッ プルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを開設する。バンド活動の ほか、魚釣りなどアウトドアにも積極的。取材時は、指に貼った絆創膏を見 せて「自分で釣った魚でケガをした」と屈託のない笑顔で答えてくれました。
あろたんさん(41歳)からの相談 Q.40歳で片側の卵管が通じていないこと、5㎝ほどの筋腫があることがわかりま した。41歳で採卵、6個の卵子のうち4個が媒精により受精。うち1個は2 日目に凍結、1個は5ABの胚盤胞まで育ったので6日目に凍結、ほか2個 は変性したため廃棄になりました。10月に体内に戻す予定ですが、仮に凍結し ている卵子が2回ともダメだった場合を考えると、少しでも早いうちに再度採 卵→凍結をしたほうがよいのではと思うように。クリニック側から特にそういっ た選択肢の提案はないのですが、採卵を2回続けて行うこともあるのでしょう か?どの程度期間をあけるものなのでしょうか?
子宮筋腫への対応から
あろたんさんは、今回の凍結胚を移植したとしても成功しなかった場合のことを考えて、できる限りストックしておこうと考えているようです。
福井先生 あろたんさんのおっしゃるとおり、今は移植をせずにもっとたくさんの胚盤胞をためておくために再度採卵をするのもいいと思いますよ。
当院も、積極的にそのようにされる方が多いです。
僕の方針としては、年齢を考えると 1 ヵ月でも若い卵をたくさん採っておくべきだと思います。
子宮は老化しにくいので、胚盤胞をためてから体に戻せばいいと思います。
ただ、あろたんさんの場合は子宮筋腫のことが心配です。
筋腫ができた場所によっては、着床の妨げになるので、まずは筋腫を取るのが先ではないでしょうか。
着床への影響
どんな場所に子宮筋腫ができると着床の妨げになるのでしょうか。
福井先生 子宮筋腫ができた場所によっては着床の妨げになります。
子宮内膜に近ければ近いほど、悪影響を及ぼします。一方、大きいけれど外側にある筋腫はそれほど問題にはなりません。
実は、どのような場合に手術をしなければならないかという判断はつきにくいのですが、内膜の不自然な収縮をまねく場合は着床の妨げになるので手術をしたほうがいいと思います。
最近、内膜の動きは時間を追って内膜を撮影する「ダイナミックMRI」という検査機器で診ることができます。
ただ、このような精査を行わなくても筋腫が着床に支障をきたす疑いがある場合はやはり積極的に取ったほうがいいかと思います。
術後の移植まで
子宮筋腫の手術をするデメリットはありますか。
福井先生 筋腫の手術をした場合は、傷が癒えるまでに 3 ヵ月〜半年はかかるので、その間は着床できません。
ですから、筋腫の手術をしてから傷が癒えるまでの時間を無駄にしたくないので、その期間も採卵していくことをおすすめしています。
凍結胚を体内に戻すまでの保存期間が長くなると、移植が成功しにくいなどの支障は出るのでしょうか。また、保存期間に期限はあるのでしょうか。
福井先生 凍結保存の期間によって胚盤胞が劣化するといったことはありません。
だいたい数年以内なら問題ないといわれています。
ただ、保管の費用がかかるといった経済的な不利益が出てくると思います。
絶対的な保証はありませんが、僕ならたとえば、 4 〜 5 個ぐらいの胚盤胞をためてからなら安心して移植に入ることができると思います。