ホルモン値が更年期状態に。
納得いく治療をする前に 子づくりを諦めるべき?
北村 誠司 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に 従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子 宮筋腫、内膜症の解消・ 改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症 例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿 器科の男性不妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性射精な ど、男性不妊の治療体制も整えている。AB型・いて座。いよいよ春 が来て、プライベートでも仕事でもいろいろ動きが。クリニックのリニュー アルプランも本格的に進めていきたいそうです。
ともたまさん(44歳)からの相談 Q.1年前からタイミング療法で不妊治療を進めてきましたが、彼が転勤 で近くにいないのでなかなかうまくタイミングが合いません。最近 の血液検査では、E2154.80pg/ml、LH21.85mIU/ml、FSH 25.85mIU/ml、AMH0.1ng/mlという結果でした。かなりショック で、先生からも「あなたは不妊治療よりも更年期の治療をしたほうがいい」 といわれてしまって……。フラーリンやケイギョクコウ、和漢薬、タン ポポT1など漢方薬も飲み始めましたが、納得がいく治療もしていない のに、子作りをあきらめなければいけないのでしょうか? これから私 はどうしていったらいいのか、教えてください。よろしくお願いします。
ホルモン値から分かること
最近計測したホルモン値にショックを受けたと いうことですが。
北村先生 生理中なのか、排卵の前後なのか、 ホルモンを計測した時期によって変わってく ると思うのですが、仮にこれが排卵直前とい うことでなければ、LH、FSHの値はだい ぶ高くなってきていると思います。
AMH(抗 ミュラー管ホルモン)が 0.1 ng / ml と低値です が、 44 歳ならばこのくらいの値の方はたくさ んいらっしゃいます。
総合的にみれば、やは り卵をつくりにくくなっている状態だといえ るのではないでしょうか。
先生から「あなたは不妊治療よりも更年期 の治療をしたほうがいい」といわれたそうで すが、もしかしたら先生は、「そろそろ閉経が 近くなっている」と伝えたかったのかもしれ ませんね。
年齢と流産率
まだ妊娠できる可能性はありますか。
北村先生 体外受精では 44 歳で妊娠・出産さ れたというケースもありますが、このくらい のご年齢になると高度生殖医療でも妊娠率は9 %未満で流産率が 70 %くらいです。タイミ ング療法ではゼロに近いという厳しい状況で す。
望みはまったくないとはいえませんが、 その現実は知っておいていただきたいですね。
これまでの1年間、少し中途半端な形で進 めていってしまった気がして、ご自身でも混 乱しているのでは。
年齢は上がってきている けれど、パートナーが近くにいなくてタイミ ングが設定しにくい。
やれる範囲で何とかし ようと漢方やサプリを使っているけれど、気 持ちのほうでは納得がいかない。
子づくりを 諦めることはないと思いますが、もし治療を 続けられるなら、ここでしっかり立て直す必 要があると思います。
治療前にプランを
どのような形なら納得がいくのでしょうか。
北村先生 これから大事な1年だと思います ね。
たった1年でも状況は大きく変わってき てしまいます。 45 歳になって妊娠して出産するというのは非常に困難なこと。
妊娠され たとしても出産まで到達できるかどうか。
とにかく治療を急いでいただきたいと思い ます。
残り少ない時間を考えると、離れてい るパートナーとうまくタイミングを合わ せていくのは難しいでしょう。
体外受精 であればそのへんは計画がしやすいと思 います。
少しでも妊娠の可能性が高い方 法で、気持ちも納得したいということで したら、この1年間に限定して体外受精 に臨んでみてはいかがでしょうか。
諦め ることはなくても、現状をきちんと見極 めることは大切です。
また、パートナーの協力も欠かせません。
不妊治療は一人ではなく、二人で受けるもの です。
今度こそ後悔なく進めるためには、ど こまで協力してもらえるのか、どの程度子ど もを欲しいと思っているのか、お互いの意思 確認をしっかりと。医療側は選択肢を提案し ますが、最終的に決めるのはご本人です。
治 療前にきちんとプランを立てて、時間を有効 に使っていただきたいと思います。